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社長就任後の第一歩は経営力向上計画とともに~自社の経営課題を見つめ直し、新しい事業に挑戦~

経営力向上計画は、中小企業等経営強化法に基づく制度であり、自社が直面する課題の整理、財務面の分析、生産性向上の目標設定、さらには設備導入や人材育成などの経営力を向上させるための取組を検討し、事業計画としてまとめることが出来る支援ツールです。
国による認定を受けることにより、設備投資減税(中小企業経営強化税制)や政府系金融機関からの低利融資などの金融面での支援を受けることができ、2016年の制度開始以来、多くの事業者さまにご活用頂いております。
見聞録では、経営力向上計画を上手に活用している事業者さまの『使い方』に焦点を当て、その秘訣をお届けしていきます!

新潟県佐渡市に本社のある精密機械加工の「佐渡精密株式会社」。廃校になった中学校の校舎を利用し医療機器や航空機、半導体製造装置などの高度な部品を手掛け、離島発で全国800社以上の顧客を有しています。4代目の末武和典社長は、経営力向上計画及び中小企業経営強化税制を効果的に活用されています。
社長就任当時は、これから会社をどうまとめていこうか?どのように新しい事業を創出していこうか?などについて頭の中で色々と構想していらっしゃったそうです。そのような時に、経営力向上計画に出会い、自社の置かれている状況や課題を改めて明確化し、そのうえで生産性向上に向けた具体的な取組を計画としてうまく整理することができたとのことです。
計画実施にあたっては、税制優遇制度を上手に活用し、設備の積極投資を進め、新事業に進出しながら順調に成長しているそうです。今回は、末武社長が「経営力向上計画をどう活用したのか?」を中心にお話を伺いました。

-どのような経緯で経営力向上計画のことを知ったのでしょうか?

私は、2016年に社長に就任しました。その際に、ある雑誌にどこかの社長さんが自分で経営力向上計画を策定したという記事が載っていまして、それを見て、「自分でもやってみよう!」と思ったのがこの制度との出会いでした。当時の私は、社長になったばかりで、会社のこと、経営のこと、社長としてやらなければいけないことを色々と頭の中で考えてはいたものの具体的なものとして明確化できていたわけではありませんでした。経営力向上計画を自分で策定してみたことで、自社を見つめ直すことにより、自社の置かれている状況や課題、今後の方向性をうまく整理することができました。

-ご自身で経営力向上計画を策定されたとのことですが、率直なご感想はいかがでしょうか?

経営力向上計画には、具体的な取組を記載する項目がありますが、業種ごとに定められた指針に沿って取組を記載していくことになります。当社は製造業なので製造業の指針を用いたのですが、「従業員に関する事項」「製品及び製造工程に関する事項」「営業活動に関する事項」など、項目ごとにどういったことに取り組めば生産性が向上するのかが分かりやすく示されています。これを読むことで、こういう視点で考えなければいけないのかという気づきや、今後やらなければいけないポイントや方向性を決めるのにとても参考になりました。

-生産性向上に向けた課題を解決するためにどのようなことに取り組んだのでしょうか?

航空機関連産業用の部品加工に取り組む計画を作る中で、機械の老朽化により生産性の効率が悪かったことや従業員によって技術や作業工程にばらつきがあり、時間あたりの生産性が低かったことに気がつきました。
これらの課題を解決するために取り組んだことは大きく3つです。
1つ目は、新しい機械設備を積極的に導入しました。機械設備の導入に際しては、国や自治体の補助金も活用させていただきましたが、中小企業経営強化税制が活用できたことも大きなインセンティブとなりました。この税制は経営力向上計画の認定を受けたことで使える設備投資減税で、法人税の即時償却又は取得価額の10%控除を選択適用できるものです。当社は、即時償却をしました。即時償却の良い点は、次の年の経費負担が軽減され、経営判断がしやすく、償却を引きずらずに済むので設備投資に積極的になれるところだと思います。

導入した歯車研削盤

2つ目は、技術者の育成に力を入れました。OJTで教育していますが、これまでは、職人気質であることもあり見て覚えるのが普通でした。そのため、感覚的には分かっていても言葉で明確に説明することができない技術者が多かったです。そこで、理論や理屈を結びつけるために、技術者に技能検定試験を受けさせるようにしました。そうしたところ、技術的なことを話題にする会話が多くなり、今では、技術の詳細について資料を作ってプレゼンテーションが出来るくらいにまでスキルアップしました。また、新入社員には、外部のテクノスクールに3ヶ月通わせることもしており、そこで工業の基礎を学んでもらい、3ヶ月後に会うと、とても成長を感じます。

研修の様子

3つ目は、IoTの導入です。佐渡市内の本社工場に居ても新潟市内にある工場の機械稼働状況が遠隔で把握できるIoTシステムを構築し、離島であることを感じさせない高品質・納期遵守を実現する管理・サポート体制を完備することができました。また、このIoT化によって、機械の稼働状況が明確に分かるようになったこともあり、数値として作業効率が見える化されました。そのおかげで、時間あたりの生産性に大きな改善余地がある事に気がつきました。数値を分析し、従業員にも情報共有をすることで、各部門で独自の工夫を行うようになりました。結果として、時間あたりの生産性が向上し、残業を削減することにも繋がりました。工夫をすれば結果として現れるため、従業員個々のやる気に繋がっているように思います。

佐渡と新潟で工場の稼働状況が把握できるIoTシステムを構築

-既に生産性向上という結果が出ていますが、今後の取組について教えてください。

生産性向上という結果は出ていますが、経営力向上計画を策定したことで、これから会社をどうしていこうかという考えをうまく計画に落とし込めたことが大きかったと思います。計画で定めた取組を着実に実行することで、売上も順調に伸びております。2022年度の売上は過去最高を更新することができました。これにより、賃上げという形で従業員への還元も行っております。
これからもお客様に必要とされる存在でありたいと思っています。また、世界市場でも成果を出せるようになることで、世界に通用する社員がいるんだということを当社と故郷である佐渡市の魅力にしていきたいです。そのためにも、次の世代にしっかりと事業を引き継げるような基盤を作り、自分や従業員の知恵を加えながら更に魅力ある会社にしていきたいと思っています。

■企業概要
佐渡精密株式会社
代表取締役社長 末武和典
新潟県佐渡市沢根23番地1


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