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相談者のことを一番に考えて相談者が喜ぶことをしたい

こんにちは、関東経済産業局 経営支援課です。
地域への熱い思いを持って奮闘するキーパーソンに、その情熱のルーツや取組などを伺う「地域HOTパーソン」。今回の地域HOTパーソンは、茨城県よろず支援拠点でチーフコーディネーターとして事業者支援の最前線に立ち続ける宮田 貞夫(みやた さだお)さんです。
宮田さんは茨城県よろず支援拠点(実施機関:公益財団法人いばらき中小企業グローバル推進機構)のチーフコーディネーターとして、県内中小企業からの様々な経営相談に日々対応しています。チーフコーディネーターとなって1年目、ある相談者との出会いがきっかけで、「相談者ファースト」を強く心がけるようになったという宮田さんに、事業者支援にかける想いを伺いました。

「1人」から「チーム」への心境の変化

-2014年度のよろず支援拠点の立ち上げからこれまで、ずっとチーフコーディネーターとして活躍されていますね。立ち上げ当時のエピソードを教えてください。

茨城県よろず支援拠点に入るまで、私は1人でコンサルタントとして独立してやっていました。チームを一つにするのは自分には難しいので、みんなと一緒に協力してやるなんて考えは毛頭もありませんでした。相談を分担するのではなく、自分1人で大体1日10人くらいに会うことを目標にしてやっていました。当時はチームが目標とする相談件数に対して足りない部分 は全部1人でやろうと思っていましたね。

-今ではチームをとても大事にしていますね。心境の変化があったのでしょうか?

はい。当拠点に入って3年目が終わった評価委員会の時、評価委員の1人から「茨城県のチーフコーディネーターは基本的にマネジメントをやっていないですね」と言われました。そこで初めて、マネジメントをやらないといけないと思ったんです。

しかし翌年の4年目は全然だめでした。マネジメントと言っても何をすればいいかわからず、自分の負担ばかりが増えて、新しいことを少しも思いつかない。惨憺たる1年でした。その年の評価委員会でも何を話したか覚えていないくらい内容の薄い説明でした。

評価委員会が終わった後、来年どうしようかと考えていたら、ふと、自分がコンサルとしてよろず支援拠点の相談対応をしたら、チーフに対してどういうアドバイスをするだろうと思ったんです。コンサルの立場では、社長やリーダーの仕事が回らない時は、必ず「権限委譲」するようにお話しします。そしてみんなを頼りにするやり方に変えるよう提案するよなと思いました。そこから、「連携チーム」や「広報チーム」などのプロジェクトチームを5つ作って、それぞれ5名のリーダーに権限委譲し、チーフと同じ権限を与えました。チーフを含めたコーディネーター全員がいずれかのプロジェクトチームに入り、みんなで相談しながらそれぞれのプロジェクトチームを主体的に回していくような仕組みを構築したのです。全員のモチベーションが上がりました。それから後はマネジメントが楽になりましたね。

-実施機関(いばらき中小企業グローバル推進機構)もチームの一員ですね。

はい。当拠点の実施機関は、「コーディネーターが相談の成果をあげるために支援する」という意識が徹底しているなと思います。

当拠点で一番大切なのはとにかく相談者。実施機関がそれを理解しているから、運営の細かいところで考えが違ったことはあるかもしれませんが、結論が違うことはありません。私がたとえ不可能なことを提案したとしても、否定するのではなく、私の思いを理解し可能にする方法を一緒に考えてくれます。よろず支援拠点の立ち上げ当初から支えてくれて、その後もずっと側面でしっかり支えてくれています。非常にいい信頼関係ができあがっていると思います。

信頼する仲間。茨城県よろず支援拠点チーム!

コンサルとしての人材育成

-茨城県よろず支援拠点に入る前に大学の講師のご経験もあるということですが、記憶に残るご経験はありますか?

今はコロナ禍もあって辞めましたが、中央大学で16年ほど講師を務めていました。中央大学と同じ頃から講師を務めている茨城県立IT短大では今も講師を務めています。

講義内容は、ビジネスプレゼンテーションという領域で、授業の最初に経営者を呼んで事業の概要と学生への課題を説明してもらった後、学生がグループで討論します。その後、経営者を授業に呼んで、学生が経営者にプレゼンします。

当時、中央大学の商学部ゼミナール連合会でアンケートをとったところ、私の授業が商学部の授業の中で一番人気だったんです。私がすごいわけじゃないのは想像がつきますよね(笑)。なぜ一番人気になったか、それは雑誌等に載っているような経営者が授業に来るからです。前職で証券会社にいたのでそれが可能でした。学生にとっては、私の授業をとると、ベンチャー企業の経営者が講義に来て、その経営者に提案もできるしすごく面白い!ということでした。面白いと感じた学生たちは柔軟な発想でたくさんの提案をしてました。

「教える」とは、単に理論を伝えるだけではなく、「学生が学びたいことに、どうあわせるか」ということでもあり、その点ビジネスも学校も一緒だと思いましたね。

-よろず支援拠点の人材育成について取り組んでいることがあれば教えてください。

よろずのコーディネーターには、常々「背伸びをして」と伝えています。コンサルは「それは自分の専門ではない」と逃げたくなることが結構あります。専門でないからと逃げているコンサルは成長しません。
自分の専門ではなくても、背伸びしてやってみると、次同じ話が来たときにはそのテーマでコンサルができるのです。背が伸びているのです。

ただ、全く専門外の相談があった時は仲間を頼ることも大事です。当拠点の場合は、専門ごとに22の特別チームを作っていて、専門外の相談があったら、特別チームと一緒にやろうという仕組みを作っています。

また、専門性を磨く取り組みとして3年前から力を入れ始めたのは、朝礼が終わってから10分間の「モーニングセミナー」です。セミナーでは、私も含めコーディネーター全員がそれぞれ作成した10分の動画を毎朝1人ずつ発表し、当拠点 のコーディネーターや連携する支援機関担当者も観ます。動画は作るのが結構大変で、撮り直しでTAKE20とかもありますよ(笑)

結構大変なので今後改善の余地はあるかもしれませんが、みんなはその動画を作りながら「自分の専門性」への意識を高めていると思います。

作成した動画を発表するモーニングセミナーの様子。

相談者ファーストを大事に

-よろず支援拠点での相談対応で、心がけていることを教えてください。

「相談者ファースト」です。この言葉を使い始めたきっかけがあります。当拠点に入って1年目の時に相談を受けた家族経営の企業で、経営者の父親が亡くなり、20歳前後の兄妹が引き継いで経営をやっていましたが、全然上手くいかず、資金繰りが苦しくなって相談にきました。私はその時「コストカットが必要ですね」などと、兄妹の切ない気持ちをよそに、コンサル的な経営改善策の話をいっぱいしたわけです。後から思うと本人たちはすごく不安な顔をしていました。その兄妹は「できるかどうかわからないけれど、頑張ります。」と言って帰っていきました。その後、連絡がつかなくなりました。会社に連絡しても連絡がつかないということは、おそらく夜逃げをしたのだろうと思います。夜逃げをしたということはどういうことか。彼らは一生その負債を背負って生きていくということです。コンサルだという思い上がりが招いた結果でした。彼らを追い込んでしまったこと、「大丈夫ですよ、一緒に考えましょうね」と言ってあげられなかったこと。今でもその時のことを後悔してます。忘れられません。

当拠点のコーディネーターによく言っているのは、こちらの視点ではなく、相談者が話を聞いてどう思うかという視点で相談対応をしてね、ということです。相談者が安心して帰ってくれるように常に「相談者ファースト」で対応をするよう心がけています。

相談対応の様子。真摯に耳を傾ける宮田チーフ

広域連携で相談者に喜んでもらえる支援を

-今後の展望について教えてください。

よろず支援拠点の連携のレベルをもう1段あげて、支援の際は県を越えて全国のコーディネーターにつないでいきたいと考えています。以前は、他県に声をかける立場にはないと思っていました。しかし、当拠点でやっているネットライブ放送「茨城よろずチャンネル」をきっかけに、他県のよろず支援拠点から問い合わせがくるようになり、他都県と共同で「茨城よろずチャンネル」をやったり、「よろずチャンネル関東サミット」を茨城県で開催するまでになりました。その時に当拠点が中心になってやってもいいのだと気づいたんです。

現在、当拠点発で、関東ブロック内のコーディネーターを貸し合いましょう、という提案をしています。よろず支援拠点は国の資産です。相談者ファーストで相談者のことを一番に考えて相談者が喜ぶことをしたい。まずは関東ブロックの資産を貸しあえばいいかな、それが今目指すところです。

相談室の前で。この場所で相談者の様々な思いを聞く

【プロフィール】
宮田 貞夫(みやた さだお)
2014年 茨城県よろず支援拠点チーフコーディネーター
大手証券会社勤務を経て、現在コンサルティング会社代表取締役。
県内中小企業の経営革新・DX、事業再生、マーケティング、IT化、地域活性化等に関する実績多数、「効率経営からおもてなし経営へ」(同友館、共著)など共著の書籍も多数
資格:中小企業診断士・ITコーディネータ・ターンアラウンドマネージャー

【編集後記】
チャレンジ精神旺盛で、コンサルが大好きで、「趣味は仕事」と言い切る宮田さん。表情豊かに生き生きと話をする姿を見て、私が元気をもらいました。
チーム一丸となって相談者ファーストを大事にする宮田さんに悩み事を相談すれば、絶対解決に導いてくれる、そんな安心感を持ちました。


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