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企業に頼られる『群馬のお母さん』

こんにちは、関東経済産業局 経営支援課です。
地域への熱い思いを持って奮闘するキーパーソンに、その情熱のルーツや取組などを伺う「地域HOTパーソン」。今回の地域HOTパーソンは、群馬県よろず支援拠点でチーフコーディネーターとして事業者支援の最前線に立ち続ける瀬古 裕美(せこ ひろみ)さんです。
瀬古さんは群馬県よろず支援拠点(実施機関:公益法人群馬県産業支援機構)のチーフコーディネーターとして、県内中小企業からの様々な経営相談に日々対応しています。全国でも数少ない女性チーフコーディネーターである瀬古さんに、これまでのご経歴や、事業者支援にかける想いをお伺いしました。

茨城から群馬へ

-よろず支援拠点のチーフコーディネーターになるまでの経歴を、簡単に教えてください。

実は、私は茨城県出身です。民間企業からのお誘いもあったのですが、茨城県庁に就職することになりました。はじめに本庁で秘書業務を数年務めたのち、県の東京事務所で、知事の秘書や経理、各部局に関連した会議の設定や、各種団体イベント設営のお手伝いなどをしていました。あまり公務員らしくない仕事が多かったかもしれません。秘書時代が長かったこともあり、『この人を立てるにはどうしたら良いか』ということを常に意識していましたね。
その後、東京で結婚し、子供が0歳児の時に県庁を退職しました。夫が群馬県の東京事務所に勤めており、2年の勤務を終えて群馬県庁に戻るタイミングに併せて平成元年4月から群馬県産業支援機構(当時は公社)で働くことになりました。
私の知らないところで、茨城県の幹部の方が群馬県に声をかけ、色々と骨を折ってくださったみたいです。感謝しかありません。

-育児と仕事の両立は、さぞ大変だったのではないでしょうか?

そうですね。東京事務所時代に出産、当時は産前・産後の休暇しか取得しませんでした。子供は近くの0歳児専門の保育園に預けながら働いていました。業務が忙しい時期は、子供は実家に預けて、夜中まで働いていましたね。
群馬に移ってからも、子供は近くの保育園に預けて、フルタイムで働いていました。昔は、育児時間休暇の取得とか言い出せない時代でしたね(苦笑)。でも周りの皆さんや保育園の園長先生からの「お母さん、がんばっていますね!」というお声がけに、すごく救われました。

-企業支援のお仕事は、いつ頃からはじめたのでしょうか?

機構に移った当時、国の基金事業で、『情報センター』というものが組織内にできました。それまでは、製造業の受発注斡旋が機構の主要業務だったのですが、ホームページの作成やLotus123の活用など、商業サービス系の支援を始めることになりました。自分でも、『製造業のためのホームページ○○セミナー』のようなイベントの企画やカリキュラムの作成を行っていましたね。
そのようなイベントの際、来場された企業さんに『お声がけ』をしていました。「社長さん、今日はどうしていらっしゃったのですか?」という感じです。例えば、身近にレンガ造りのピザ屋さんがあり、繁盛していて興味がありましたので、そこの社長さんが研修にこられた際、お昼休みにダッシュで食べに行き、自分が感じたことをレポートにすぐさままとめ、1日の研修が終わった際に社長さんにお渡しした、といったこともありました。
このようなやり取りをいろいろな企業さんと行っていく中で、企業さんから「ちょっと相談に行ってもいい?」と気軽に言われる間柄になってきました。総務部門のような、企業支援と直接関係のない部署に異動したこともあるのですが、そのような時期でも、相談はお受けしていましたね。

-よろず支援拠点に入った契機は?

定年を迎えた時、機構で総合相談課長をしておりました。この部署はよろず支援拠点の担当もしていましたので、理事長から『よろずでコーディネーターとして働いてみないか?』と打診を受け、喜んでお受けいたしました。よろず支援拠点の『知恵と工夫』という考え方に強く感銘を受けていたからです。
2年前よりチーフコーディネーターをさせていただいていますが、よろず支援拠点の全国本部からは『実施機関、コーディネーター、チーフコーディネーター』を全て経験している人は、全国でも瀬古さんだけですよ』と言われます。群馬愛と「よろず愛」は強いと思いますね(笑)。

-企業支援のどういったところにやりがいを感じているのでしょうか?

何も分からない状況で群馬に移ってきて、ここまで来られたのは企業さんのおかげと思っています。企業さんから「相談に行っても良い?」と聞かれると、自分が元気になるのが分かります。
「企業さんから元気をもらった」ということですね。機構を退職した時、「感謝するのは、自分の子供と、働かせてもらった財団と、そして企業の方々です」と言いました(笑)

コーディネーターと打ち合わせをしている瀬古さん

実践塾!

-ちなみに、瀬古さんご自身のご専門はどういったものになるのでしょうか?

基本的に、勉強することはキライでして・・・。財団法人日本生産性本部の認定試験は受けました。中小企業診断士の超ミニ版のようなものです。3ヶ月研修だったのですが、人生で一番マジメな3ヶ月でしたね(笑)。他には、JAMBO(旧日本新事業支援機関協議会)のインキュベーション・マネージャー研修も受けていますが、「地域資源活用事業」や「農商工等連携事業」など国が認定する事業の支援に携わったことも役立っています。

-勉学ではなく、実践塾ですね(笑)

マーケティングが好きなのです。展示会などで『お客さんがどう見るか』という部分に興味があります。東京のデパートに行っても『こういう包装の仕方があるのか!』と興味を引かれます。好奇心が強いのだと思います。昔から、地場産フェアの展示協力ですとか、セミナー講師はよく頼まれましたね。飾り付けの仕方、バイヤーとの折衝方法などについてご支援していました。
人から「ご専門は?」と聞かれた時には「おばさん目線くらいですね」と答えています。企業さんからも『瀬古さんは、クオリティの高い消費者』と言われます(笑)。

桐生ファッションウィークでのミニセミナーで講演する瀬古さん

プレイヤー兼マネージャー

-チーフは『プレイヤー兼マネージャー』としての性格を持っている訳ですが、瀬古さんは、そのバランスをどのように考えられていますか?

最低4対6、できれば3対7が良いのではないかと思っています。現場感覚を維持するためと、自分指名で相談に来る企業さんもいらっしゃるので、チーフの立場にあったとしてもプレイヤーとしての役割もある程度必要かと思っています。群馬よろず支援拠点は「事業者の魅力と可能性を引き出す、チームとして事業者を支える」ことをモットーとしています。コーディネーターの協力に感謝です。もっとも、個人的には、プレイヤーとして相談対応している方が好きです(笑)。

-企業対応で、留意していることはありますか?

『何か使える補助金はありますか?』というご相談をよく受けます。その際は、まず『何をやりたいのか』という点を詳しく聞くようにしています。やりたいことが分からないと正しいアドバイスができないからです。また、補助事業が終わった後の事後書類の作成も大変ですから、相手にその覚悟があるのか確認するようにもしています。
また、『お金をかけずに、どういう工夫が出来るか』という点を意識しています。企業さんも、成功体験が出来ると、次に進んでいけます。企業さんの『引き出しをつくること』が自分のできることだと思っています。支援者には、企業さんの『可能性と魅力を引き出すこと』が仕事だといつも言っています。

地域連携フォーラムで女性COとゲストを囲む瀬古さん

金融機関を味方につける

-最近、力をいれていることは何でしょうか?

よろず支援拠点が連携する相手として事業者をよく知る金融機関との関係を強化したいと思いました。そのため、最近、簡単な相談申込書を作りました。
現場の若手の銀行員はとても忙しいものです。そういう人達がよろず支援拠点を使う際、上司に説明しやすいように、記入項目を最小化した1枚紙の申込書を、企業さん若しくは金融機関からよろず支援拠点に送付していただくだけで良い、という仕組みを導入しました。相談案件が、若手行員から上司、支店長、本部へと上がっていく際、『よろず支援拠点は、この申込書一枚のみで相談に乗ってくれる』ということであれば、素早い対応が可能です。初年度、ある信用金庫からは240件も相談が来ました。最近は、商工会議所からも、この申込書を使った相談がくるようになりました。今後、広く周知していこうと考えています。

-若手行員によろず支援拠点を知ってもらう、使ってもらうということは重要ですよね。

そうです。『若手行員を味方につける』のです。加えて、できれば、若手行員に相談の『前さばき』も学んで欲しいと思っています。そのため、若手行員向けの『1日研修』をはじめました。よろず支援拠点に1日いてもらい、(同席しても問題ない案件について)相談対応の際、横に付いていてもらい、支援の仕方を実地で学んでもらっています。
また、企業向けのミニ勉強会が開催される日に研修会を設定し、講義にも参加してもらうようにしています。1日の終わりには『あなたをよろず支援拠点の応援隊と認めます』というような卒業カードをお渡ししています(笑)。1人でも2人でも、多くの若手行員の方が、行内によろず支援拠点の使い方を広めてくれたら良いなと思っています。

支援者に向けて

-最後に、企業支援に携わる方々に、一言お願いできましたら思います。

『自分に自信を持って、自分の視点を生かして進んで欲しい』ということですかね。色々で良いと思いますよ。女性の場合は、『女性であることに甘えないこと!女性だからこその視点を活かして欲しいです』(笑)

群馬県よろず支援拠点メンバー!

【プロフィール】
瀬古 裕美(せこ ひろみ)
令和4年 群馬県よろず支援拠点チーフコーディネーター
(公財)群馬県産業支援機構参事兼課長、群馬県よろず支援拠点コーディネーターを経て、現職。

【編集後記】
好奇心旺盛で、温かく、そして時に厳しく企業のご相談に乗る瀬古さん。その優しい眼差しに、多くの企業の方が信頼を寄せるのも、頷けます。これからも、がんばってください!



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