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新しい経営支援を実践し、拡げていく~地域の応援隊である関係人口を増やし、新たな魅力創造につなげる~

こんにちは。関東経済産業局 経営支援課です。
地域への熱い思いを持って奮闘するキーパーソンに、その情熱のルーツや取組などを伺う「地域HOTパーソン」。今回の地域HOTパーソンは、埼玉県商工会連合会で広域指導員※をされている笠原亮彦さんです。
2023年4月から広域指導員としての活動を始められましたが、その前は寄居町商工会の経営指導員として、企業支援にとどまらず地域振興の取組にご尽力されてきました。
広域指導員としての取組や、寄居町独自の地域に根ざした取組についてお伺いするとともに、若手指導員に向けた熱いメッセージをいただきましたのでお届けします。

※広域指導員:経営支援の経験を多く積み、その経験を活かし埼玉県内の商工会53エリアの事業者支援と商工会支援並びに支援担当者育成を手掛ける人材。

広域指導員としてやりがいが持てるような職場作りを

―今年度から広域指導員に着任されたかと思います。

元々商工会に入ったのは、現場で実践できる仕事に魅力を感じ、地域で頑張っているお店や企業の支援を通じて町の新たな魅力づくりや地域活性化に貢献したいと思ったためです。

広域指導員には前任者からの推薦をきっかけに着任しました。県内に53もの商工会があると、声の大きい指導員が目立つのかもしれません(笑)

広域指導員の仕事は多岐にわたりますが、私が広域指導員として取り組むべき一番の課題だと思っていることは「若手の育成」です。若い経営指導員もやりがいを持てるような仕事にしたいという思いから、先輩指導員がそのような職場作りをしていかなければいけないと思っています。

―具体的にどのような活動をされているのでしょうか。

埼玉県内の商工会から支援依頼をいただいた際に派遣される仕組みで、派遣先でどのような案件や支援に取り組むかを話し合って決めます。

例えば私が出向したことがある小川町商工会では、人的ネットワークを活かして、若手職員と関係支援機関とともに、経営革新計画の事業化支援として海外展開の支援を行っています。

また、長瀞町商工会、皆野町商工会、桶川市商工会では、経営発達支援計画に基づく新たな需要の開拓支援として、製造業支援のための支援環境構築や、展示会出展支援による販路開拓などを進めています。

和光市商工会や児玉地域4商工会では、経験の浅い職員への支援として経営力再構築伴走支援の研修や同行企業巡回による支援能力の向上、商工会の支援環境の構築支援など、商工会毎の課題などに合わせた支援を行っています。これらの取組は、寄居町商工会での経験を活かして取り組んでいます。

寄居町での経験を活かし、埼玉県全域の広域支援に取り組んでいる

地域の関係人口を創出し、地域全体で盛り上がる

―寄居町商工会で笠原さんが主導して行った取組について教えてください。

2019~2020年、寄居町商工会が主体となり、行政や企業などの関係機関と一体で地域課題解決型事業LAYERS HOOP YORII(レイヤーズフープヨリイ)に取り組みました。「無名の町に、無名の新人あつまれ」というコンセプトで、寄居町の新たな魅力の創造や関係人口の創出、移住や創業への発展を目標とした取組となります。

具体的には、地域企業3社から課題を提供してもらい、その課題解決に協力してくれる人を募集しました。メンターの他、デザイナーやプロデューサー、カメラマン、WEBデザイナーなど、多様なスキルを持って地域課題解決を実践している方々や学生など合計30名ほどが集まり、課題解決に向けてアイデア創出や事業化支援等を行いました。

結果として、課題提供いただいた企業の新事業展開につながりました。これまでのように、新たな経営資源を投入するのでは無く、参加者が持ち寄った経営資源で対応できる内容であった点がこの取組のポイントとなります。

寄居町価値創造プログラム「LAYERS HOOP YORII」

―地域支援に力をいれられているのですね。

LAYERS HOOP YORII(レイヤーズフープヨリイ)に参加された方の中にはUターンで寄居町に戻ってきた方や、寄居町に移住される方がいました。その方達が創業したり、新たな事業をはじめたりと、新たな魅力や産業の創出、空き店舗対策等にも繋がっています。

今回関係したメンバーがその後も寄居町に関係を持ち続けていただき、新事業のお手伝いや新たな人の繋がりをつくっていただいたりと、今後の商工会の新たな支援環境として「地域の関係人口」を増やすことが、地域全体の盛り上がりのためにも大切だと思っています。

地域外から多様な人材が参加し、新事業の立ち上げを支援

ワークライフシナジー、ワークライフブレンドで忙しい中にも心の豊かさを

―これまで経営指導員として様々な経験を積まれてきたかと思いますが、仕事をする上で大事にしていることはありますか。

企業をリスペクトして、身近なパートナーとして役に立ちたいという思いを常に持っています。地域企業への支援をしっかり行っていき、地域の魅力をしっかり知って、外に伝えていくことが重要だと思います。一方で地域密着に偏りすぎると外的ネットワークが弱くなってしまうので、外部の協力を得られるような取組をしていくことが大事です。

―経営指導員は大変な仕事かと思いますが。

よく言われるワークライフバランスは、仕事とプライベートの分量の調和の話ですが、仕事も生活も相乗効果を生み出すような「ワークライフシナジー」を起こせると良いと思っています。寄居町では2拠点生活をしている方もいますが、働き方も自由になったので心の豊かさを求めるような考え方は大事だと思います。

また、商工会の仕事は「ワークライフブレンド」と言えると思います。仕事とプライベートを区別しないで人生を楽しむというスタイルです。経営指導員の仕事はその道のプロと関わることができ、本やネットでは学べないような実体験を大人の社会科見学として学ぶことができます。色々なことを学べる充実度はお金で得ることができない豊かさに繋がっています。そういった点からも、企業支援はとてもやりがいのある仕事だと感じています。

Think Global, Act Local.を大事に!

―最後に、今後の展望を教えてください。

若い人にやりがいを持って仕事をしてほしいという点で、埼玉県内商工会職員で自主研究交流グループ「経営革新研究会」を2021年から実施しています。「楽しく学び、真面目に遊ぶ」というコンセプトのもと、有志で活動しています。

税務などのいわゆる経営改善普及事業は、形式知を学べば現場に落とし込めますが、伴走支援は暗黙知の部分が大きいと感じており、そのため実践型のケーススタディが大事になってきます。広域指導員の立場となって、この活動を商工会の実務に落としていけたらと考えています。

また、寄居町を新しい経営支援を実践できる場として考えており、それを県内全域に波及していければと思っています。経営支援の心得として「Think Global, Act Local.(グローバルな視野で考え、地域で行動せよ)」を大事にしていこうと思います。

様々な場で経営支援の実践経験を伝えている

【プロフィール】
笠原 亮彦(かさはら あきひこ)
1993年、川本町商工会(現ふかや市商工会)に入会。2007年より寄居町商工会に着任し、2023年から埼玉県商工会連合会の広域指導員として活動。
中小企業の経営革新、海外展開、事業承継、創業、地域資源活用等の幅広い経営支援を担うほか、創業や新事業に関し事業計画から事業化まで一貫した経営支援を実施している。

【編集後記】
企業支援に留まらない、地域振興を行う笠原さんの行動力に驚きました。
地域の関係人口を創出し、今でも寄居町に足を運ばれる方が多いのは、笠原さんの人柄あってのことだなあと感じます。


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