高齢化率45%の町、「持続可能な介護」に向けて~大子町社会福祉法人保内園の挑戦~
こんにちは。関東経済産業局次世代産業課です。当課では、健康増進・介護予防といったヘルスケア産業及び医工連携を中心とした医療機器産業の振興、介護業界の生産性向上に向けた支援、フードテックをはじめとした社会課題をビジネスで解決するための取り組み等の支援を行っています。
皆さんは介護に関する地域、社会課題について考えたことはありますか?現在日本の介護業界は急速な少子高齢化に起因する人材不足等深刻な課題を抱えており、対応が迫られています。
その為、介護事業所職員の働きやすさや生産性向上を目指した取組が不可欠であるものの、その取組はまだ始まったばかりです。
そこで、ここでは、「テクノロジーで創り出す介護の未来」の最新事例を紹介します!(見出し画像提供:社会福祉法人保内園)
今回は、高齢化率が県内トップの45%になるなど少子高齢化が深刻な茨城県久慈郡大子町で介護事業を行う社会福祉法人保内園(ほないえん)の金子様、笠井様にお話を伺いました。
保内園は、昭和47年に設立した「養護老人ホーム泉荘」、「グループホームのどか」の2施設を運営する、地域に不可欠な介護事業所です。同法人も業務の生産性改善や業務効率化に向けたDX対策を検討していました。
進まないDX、現場の「真の課題」とは
-DX導入前に事業所内で抱えていた業務上の課題は何ですか。
入居者様の日々の様子を記録する業務日誌、事業所内で扱う帳簿関係が全て紙での運用となっており、職員の業務負担が多かったことです。
DX導入は以前も検討しましたが、ネット上で情報を集めても何を選べば良いのか分からず、試しに使ってみても、なかなか思うように使えず、DXが進まない状況でした。
-なるほど。以前試行的に導入したソリューションに感じた問題点は何ですか。
職員の業務負担軽減のためベッドに付ける見守りセンサーを導入しましたが、事業所の環境とオペレーションにギャップを感じました。また費用面の負担も厳しく・・・。
-現場に合ったソリューションでは無かったということですね・・・独自にDXを進める難しさを感じます。今回、DXを進めるなかで、重視した点はなんだったのでしょうか。
介護記録、職員間の申送り業務をサポートしてくれるソリューションの使いやすさです。タブレット端末で直感的に操作できる使い勝手の良さを感じ、これならPC等が苦手な職員でも使えるのではと考えました。
介護記録に画像を共有できることもポイントです。また、導入しやすい無理のない料金体系も導入の決め手になりました。
-ソリューションを導入してみたご感想はいかがでしょうか。
導入間もないところではありますが、業務上の情報共有はかなりスムーズになりました。従来は口頭での業務報告がメインで、場合によっては翌日の全体会議まで全職員に共有できなかった情報が、タブレット上でリアルタイムに共有できるようになりました。書類作成の時間も短縮でき、入居者様と接する時間をより多く確保することができます。
また、入居者様の日々の様子もカメラ機能を用いて記録することで、ご家族様へ情報共有する際にも伝達しやすくなりましたし、何より施設で行うイベントへ参加している姿なども画像を付けてお伝えできるので、ご家族様の満足度の向上も期待できます。
一方で、端末上でのやり取りがメインにならないよう、職員間では雑談を含めてコミュニケーションは積極的に取ろうと思っています!
自治体、支援者と一緒に立ったスタートライン。DXへのゴールに向けて
-介護事業所のDX推進に対し、行政に求める支援は何でしょうか。どのような支援があったら良いか等教えてください。
DXを支援してくれる地域外企業とのネットワークがなかったので、大子町のマッチングサービスはありがたかったです。
マッチングをきっかけに今回ご支援いただいた社会福祉法人善光会さんが課題解決に向け一緒になって取り組んでくれたので、このような支援者の存在を知るきっかけ作りを自治体が支援してくれると助かります。
-地域外企業との関係構築にも大子町役場の積極的な取組が役立っていたのですね。最後に、今回の取組を通したご感想、また今後の事業所内のDX推進について教えてください。
お話ししたように、DXを導入しようと考えても何を選べば良いのか分からなかったところ、事業所内の課題の整理をきっかけに現場の課題に対する適切なソリューションを選択できたと考えています。
元々大子町役場が介護現場のDX導入に音頭を取って動いてくれていたのも、地域外の企業と繋がる上では安心材料でした。
今後は事業所内で少しずつITに慣れていき、DXを進めていければと考えています。
最後に、保内園の挑戦に積極的なご支援をいただいた、大子町介護DXの立役者である神長係長にコメントをいただきました。
(大子町役場福祉課 神長係長)
どこの介護事業所でも、長年培ってきた独自のオペレーションやルールが少なからず存在しています。
そうした「オペレーションを変える(変わる)こと」に強い抵抗感を示す方はとても多いのですが、これは、変革後のオペレーションをうまくイメージできていないことによる漠然とした不安が影響しているように思います。
そして、この「変革後のオペレーションを一緒に考えること」こそが、DXを推進する際に最も求められるべき姿なのだと思います。
介護施設のDX化に向けた取組支援
今回ご紹介した保内園のDX導入には、「令和4年度地域DX促進活動支援事業」が活用されています。
経済産業省では、地域企業のデジタル技術を活用した業務・ビジネスモデルの変革(デジタルトランスフォーメーション(DX))の実行支援を行っています。その一環として、「令和4年度地域DX促進活動支援事業」では、地域の産学官金が参画する支援コミュニティが行う地域企業のDX支援活動の取組を支援しました。
私たち関東経済産業局では、地域の介護事業所の生産性向上、働き方改善に向けたDX導入支援を行っています。先進的に介護DXを進める団体、事業者様とともに社会的機運の醸成を図りながら、介護DX推進に係る活動の更なる展開を進めていきます。
社会福祉法人保内園
創業:昭和47年2月
理事長:松本 輝男
運営施設:養護老人ホーム泉荘、グループホームのどか
【参考】
令和4年度地域DX促進活動支援事業
https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/dxcommunity/dxcommunity.html
令和4年度地域DX促進活動支援事業の支援コミュニティ
「ケアテックによる地域介護事業所のDX」
https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/dxcommunity/pdf/06.pdf
大子町田舎でIT介護!~高齢化率45%の町の挑戦~
介護事業所等における生産性向上等のためのベンチャー企業等との連携事業
https://www.town.daigo.ibaraki.jp/page/page005284.html