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“共感”がキーワード! ビッグバンドサークル設立と企業経営の共通点

経営者の情熱を発信していく“Project CHAIN”の第1弾として、静岡県焼津市に本社を構え、創業100周年を迎えた株式会社サイダ・UMSの斎田匡男社長にお話をお伺いしました。大正10年8月に斎田社長の曾祖父が斎田鐵工所を創業したことが同社の始まりです。焼津は漁港もあったことから、当時は船のエンジン部品を製造していました。その後、工作機械業界に進出し、「メーカーになりたい」という先代(現会長)の思いから自社製品の開発にも取り組んでいます。斎田社長は国内大学院在学中に、海外の大学で研究活動に従事。その後、日本に戻り修了後は国内大手メーカーに就職。数年後、同社に入社し、2021年6月から代表取締役社長に就任され、現在に至ります。

ものづくりが好き!でも学生時代はビッグバンドに熱中。「共感」の大切さを学び、これが企業経営の礎に。

-幼少期はどんな子供でしたか。

小さい頃からものを自分で作るのが好きでしたね。小学生の時には図面を書いてサッカーゴールやバスケットゴールを作ってました。工具が揃っている環境で育ったことが1つの要因かもしれないです。

-学生時代はものづくりに励んできたのですか。

大学時代はサークル活動に力を入れてました。ビッグバンドジャズ(サックス)をやりたかったのですが、サークルがなかったので新たにサークルを設立しました。設立当初はメンバー集め、大学との交渉、練習環境や部室の確保、資金調達、広報活動、イベント企画などあらゆることをこなしてましたね。今思うとこの経験は、会社経営でも生かされるはずと感じています。
全国大会に出たいという夢を持ってスタートして、見事全国大会に出場した際は、みんな泣いていました。自分の夢から始まったものが、みんなで成し遂げたものになったこの達成感は今でも忘れられないですね。組織を運営していくには、いかに共感してくれる人を増やしていくことが重要かを学びました。

-博士課程に進まれましたが、研究者を目指していたのですか。

就職活動を始めた際、「人と違うキャリアを積んでから世の中に出ていきたい」と感じ、それを実現するための選択肢の中で博士課程を選択しました。その後、ミュンヘン工科大学で研究活動に従事しました。現地ではグローバルな視点を持った多くの研究者と出会うことができ、大いに刺激を受け、視野も広がったと思います。
一方で、自分は彼らと比べて学者気質ではないとも感じていました。そこで最終的には、国内の大手メーカーへ就職しました。ただし、漠然とですが、いつかは自分のやりたいことを見つけて起業してもいいなと考えていた時期もありました。私が入社した会社はものづくりでは確固たる考え方を持つ企業だったので、日本のスタンダードを学ぶことができたことは大きいと思っています。経営者になった今、外で働いた経験は非常に有意義でしたし、後継者は一定期間は外に出るべきだとも強く思いました。

父との衝突、従業員とも!?コミュニーションって大切だけど難しい!

-数年後に入社されましたが、当時の思い出や苦労されたエピソードはありますか。

入社当時、社員とのコミュニケーションに苦労しました。それまで比較的、年齢やキャリアも近い人たちと付き合うことが多かったので、自分の考えも凝り固まっていたのかもしれません。100年かけて築き上げられた企業風土、年齢や立場も異なる様々な立場の従業員、当社の置かれた事業環境など見えていないものも多く、相手(従業員)の立場に立って物を考えることができませんでした。
それと親族内承継あるあるだと思いますが、父親(現会長)とは毎日のように喧嘩をしてました。立場が違えば、視界が違うので対立するのは仕方がないことですが、当時はそのこともよく分かっていませんでした。私の想いに共感してもらうには、まず外から来た自分を社員にどう認めてもらうかは重要なことですので、思考も変わってきた気がします。

-社員から認めてもらうには共感を得ることが大切ですし、経営者としてご自身のカラーを出すことも重要ですよね。

設立100周年に向けて企業理念を刷新しました。コロナ禍で受注も減少した中でのタイミングでした。私と部長3人の計4人で夜な夜な集まって話し合いました。私が会社のことを知りたいとの思いもあったので、会社の中のいいことも悪いこともざっくばらんに話し合い、そこからビジョンなどを作っていきました。私は3人との信頼関係を構築することにも注力し、3人はそれに応え、とても前向きに取り組んでくれました。彼らにとっても、自分達の声を聞いてくれる人がいるという喜びが多少なりともあったのではないかと思っています。

タスクフォースを立ち上げ議論を重ねた1年間。80回開催して、打合せ時間は136時間。

「多才で異端」Made in Japanの旋盤で、若い人と価値ある仕事をしていきたい。

-他の旋盤と違って大胆なデザインですね。どうして作ろうと思ったのですか。

【Versatility】多才、【Eccentric】異端。この二つの言葉を融合させた汎用旋盤【VERSEC】。
老若男女、誰もがカッコいい!使ってみたい!と思える形を目指し、誕生。

近年の急激な工作機械のNC化の流れにより世界中で汎用旋盤の製造から撤退するメーカーが後を絶ちませんでした。
しかし、どんなに時代が進もうと汎用旋盤の“モノを生み出す道具“としての価値が変わることはない、そんな想いから次世代のための全く新しい汎用旋盤をMade in JAPANにこだわり、開発しました。また、それは「自社製品を持ちたい」という先代(現会長)の夢でもありました。
ヴェルセックは、製造現場でも使えるし、教育現場でも使えます。教育的な視点で使いたいという会社もあるので若い人も触りたくなるような「かっこいい、触ってみたい」をイメージして、このデザインに行き着きました。2021年4月には教育機関では初めて三条市立大学様にご導入いただきましたが、今後も多くの若い人に使ってもらえるよう広めていきたいです。

-若い人と一緒に追い求めたい「夢」はなんでしょうか。

付加価値を提供できるものづくりを実践していきたいと考えており、そのために「社員が本業に集中できる環境」を作っていきたいですね。当社は今、社内の環境を整えることにフォーカスしています。デジタルを有効活用し、本業に集中でき、短い時間で高い成果を上げられるようになることを目指しています。また、従業員が「やりがい」を持てる会社にしていきたいです。将来的には、専門分野であるロボット工学の知見を生かして、ロボット分野で新たな事業を展開したいと考えています。学生時代のサークル活動のときのように、大きなことを成し遂げてみんなで喜びを分かち合う、そんな熱い場面が生まれると嬉しいですね。

【企業情報】
 株式会社サイダ・UMS 
 代表取締役社長 斎田 匡男(さいだ まさお)
 静岡県焼津市一色143-10
 URL:https://www.saidagroup.jp/ums/company

-編集後記-
「どうやって自分は信頼を得ようか。」という言葉がインタビューでありました。この言葉は、社員に対しても常に真摯に向き合う社長ならではの言葉だと思います。中小企業にとって根幹をなす大切な問いのように感じ、この問いに向き合うからこそ良い企業は作りあげられるのだと思いました。先を見据え、今できること、数年後にやることを取捨選択し、今に全力を注ぐ社長の真摯な一面が見られました。

                                                                                                   担当特派員 K