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経営力向上計画を活用し事業者支援と人材育成に取り組む~0から1への成功体験を通じて~

経営力向上計画は、中小企業等経営強化法に基づく制度であり、自社が直面する課題の整理、財務面の分析、生産性向上の目標設定、さらには設備導入や人材育成などの経営力を向上させるための取組を検討し、事業計画としてまとめることが出来る支援ツールです。
国による認定を受けることにより、設備投資減税(中小企業経営強化税制)や政府系金融機関からの低利融資などの金融面での支援を受けることができ、2016年の制度開始以来、多くの事業者さまにご活用いただいております。施策見聞録では、経営力向上計画を上手に活用している方の『使い方』に焦点を当て、その秘訣をお届けしていきます!

今回は、経営力向上計画を用いて数多くの事業者支援に取り組んできた木更津商工会議所の取組をご紹介します。木更津商工会議所は、「個が輝き・地域が輝く木更津の実現」をビジョンに掲げ、地域内の経済動向調査や経営力強化の実現に向けた取組を実施し、地域の総合コーディネーターとして企業・地域を元気にする活動に積極的に取り組むことで、「頼りになる商工会議所」、「なくてはならない商工会議所」を目指しています。
また、経営力向上計画の制度が開始されてから、木更津地域の事業者支援は経営力向上計画の策定支援を中心に据えて実施しています。経営力向上計画のどのような点に着目して活用しているのかなど、木更津商工会議所の経営指導員である遠藤さん、鈴木さんにお話を伺いました。

-どのような経緯で、経営力向上計画の策定支援をすることになったのですか?

平成28年に千葉県よろず支援拠点が主催した「経営力向上計画の策定・活用」説明会に当所の相談所長が参加したことが最初のきっかけでした。当時、私たちは「事業者の経営革新よりも本業の生産性向上支援」の必要性を感じており、様々な制度がある中で本業の事業計画を構築することができる支援ツールを探していました。相談所長は事業者支援に前向きであり、まずは策定してみようということで、私(鈴木指導員)が策定してみたところ、時間をあまりかけずに策定することができ、経営力向上計画は、事業者の経営課題を洗い出し、簡潔に事業計画を策定するツールとしてとても有効だと実感しました。
また当時、当所は小規模事業者の経営戦略に踏み込んだ支援を実施する「経営発達支援計画」の認定を受けたこともあり、事業者の経営状況の分析結果を踏まえた事業計画を策定し、経営課題の解決を目的とする事業計画の策定支援に取り組むことが急務でした。
経営力向上計画は申請書内にローカルベンチマークや労働生産性を記載する箇所があり、フォーマットが複雑すぎないためスムーズに経営分析を行うことができました。一般的には、事業者と何度も面談を重ねたうえで事業計画を策定しますが、経営力向上計画は一事業者当たり2~3時間程度のヒアリングで策定することができ、当所では指導員4名でこれまで100件を超える認定を受けることができました。

インタビューに答える遠藤指導員(右)と鈴木指導員(左)

-事業者が経営力向上計画を策定することのメリットを教えて下さい。

よく言われる経営力向上計画策定メリットは、小規模事業者持続化補助金の加点や税制措置(即時償却又は取得価額の10%の税額控除)を受けられるといった点ですが、我々が考える経営力向上計画の最大のメリットは、自社の現状や課題、本業で稼ぐ力を短時間で分析・策定できるところだと思います。
申請書には現状・課題認識、実施事項など、事業計画として必要な部分は全て網羅されており、事業計画書を策定した経験がなくても事業分野ごとに定められている指針に沿って策定することができるので、短時間で簡潔に事業計画を策定できるとともに、自社の現状を分析することができます。
また、経営力向上計画は補助金のように採択・不採択があるわけではなく、要件を満たすことで認定を受けることができるので、経営者にとって0から1の成功体験を積むことができます。例えば、事業を始めたばかりの経営者にとっては、成功体験を積み上げていく経験は達成感につながり、今後の経営に自信をもってもらうことにも繋がるので非常に重要だと私たちは考えています。

これまで携わってきた経営力向上計画の認定申請書

-支援機関としてのメリットはありましたか?

事業者支援に活用できるひとつのツールとして経営力向上計画を活用していましたが、現在は当所の人材育成にも活用しています。
当所は若手の経営指導員が中心となり個社支援に取り組んでいますが、いきなり補助金等の申請支援を行っても結果が出ないケースもあります。その点、経営力向上計画の申請様式は聞き取るべき事項が明確になっていますし、申請後には省庁担当者から認定に向けた修正指示やアドバイスをいただけるので、経験の浅い若手相談員でも前向きに取り組むことができます。この経験を積み重ねてきた結果、指導員として必要なヒアリング能力の向上等に大変役に立っていると感じています。当所の人材育成という観点からも、経営指導員の0から1というステップを踏む上でとても有効なツールだと感じています。

-経営力向上計画を活用した事業者支援における今後の展開を教えてください。

経営力向上計画や補助金申請支援をした事業者に対しては一定期間フォローアップを行っていますが、今後も継続的に支援が出来る体制を構築しながらひとつの支援で終わりにならないように伴走していきたいと思っています。
また、設備投資を行う事業者にとっては、計画認定を取得することにより、中小企業経営強化税制を活用して、税制のメリットを受けることができます。ただし、税制を活用するためには、対象設備について計画に記載する必要があり、工業会の証明書を取得することで申請できる方法(A類型)と投資計画を策定して投資利益率の基準をクリアすることを国に確認してもらう方法(B類型)の大きく2パターンがあります。私たちの今までの支援では、工業会の証明書を取得して申請するA類型での申請が多く、自社開発の製品など工業会の証明書が取得できない設備の申請は取り組んだことがありませんでした。しかし、B類型では年平均投資利益率が5%を超える設備投資計画を作成すれば、A類型では対象外の設備も対象にすることができるため、今後はB類型の活用も検討していきたいと考えています。

木更津市にはかずさアカデミアパークなど大きな工業団地もあることから、当所の支援の幅を広げるためにも、経営力向上計画に留まらず、中堅・中小企業にとってメリットのある様々な施策の活用にもこれからチャレンジしていきたいと思っています。

■概要
木更津商工会議所
昭和22年10月23日設立
千葉県木更津市潮浜1-17-59

https://www.kisarazu-cci.or.jp/

経営力向上計画(中小企業庁のサイト)

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/index.html