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「協力会社があって当社の事業が成り立つ」サプライチェーンを意識して防災・減災力の強化に取り組む!

事業継続力強化計画とは?

「事業継続力強化計画」は、自然災害等による事業活動への影響を軽減することを目的とした中小企業向けの事前対策計画です。
この計画には、例えば、災害時における従業員の避難・被害状況把握、社内体制の設定などの初動対策に加え、人員、設備、資金繰り、情報保全にあたって必要な対策などを記載します。有事の際の取組を簡易かつ簡潔に策定でき、中小企業にとって危機対応力を高めることできる有効なツールとなっています。
事業者が単独で取り組む場合と複数事業者が連携して取り組む場合のいずれでも計画を策定することが可能です。特に後者は連携型と呼ばれており、事業者単独では対応できないサプライチェーン上のリスクについて複数事業者で相互協力体制を計画する際などに有効です。
また、国による計画認定を受けた中小企業は、防災・減災設備に対する税制優遇や低利融資などの支援を受けることができます。

今回は、令和4年に浜松市内の協力会社7社と連携事業継続力強化計画の認定を受けた株式会社マルハナの取組を紹介します。
株式会社マルハナは、建築金物店として昭和29年6月に創業し、現在は専門工事業として設計・施工監理を生業としています。11種類の建設業許可を取得し、幅広い工事に対応しながら、建築金物の店頭販売、生花販売(胡蝶蘭等)、さらにはECサイトを利用し長期保存食の販売も行っています。健康経営優良法人やエコアクション21も取得するなど、各種制度も積極的に活用しながら事業を拡大中です。

防災・減災の取組としては、令和2年に単独型の事業継続力強化計画の認定を取得し、令和4年には主要な協力会社7社と策定した連携事業継続力強化計画の認定を受け、「マルハナ安全協力会」として防災・減災に力を入れて取り組んでいます。連携事業継続力強化計画を策定した背景について、花島 隆是代表取締役社長と花島 佳子取締役にお話を伺いました。

花島 隆是代表取締役社長(写真・右)と花島 佳子取締役(写真・左)

「連携事業継続力強化計画」を策定したきっかけを教えてください。

当社では、すでに単独の事業継続力強化計画やBCPは策定済みでした。しかし、有事の際には単独で事業を継続するのは難しく、「協力会社があって初めて当社の事業が成り立つ」「サプライチェーンとして機能しないと事業が継続出来ない」といった考えから連携事業継続力強化計画の策定について検討していました。ちょうどそのようなタイミングで、関東経済産業局から届いたアンケートに「連携事業継続力強化計画に興味がある」と回答したところ、中小機構のアドバイザーを紹介してもらい、その助言を受けながら計画を策定しました。
当社はもともと「何でもできることは自分たちでやってみよう」という社風で様々な制度も活用しており、こういった考えも策定を後押しする1つの要素となりました。

連携型で計画を策定する中で工夫されたことはありますか?

連携企業がどうしたら計画に参加してくれるかという点が非常に難しかったです。
連携企業への声かけとして計画の意義や必要性を丁寧に説明いたしました。「当社の事業は連携企業の皆様がいて初めて成り立つ」という思いも伝え、協力を依頼しました。また、連携企業の分の備蓄食料を当社が用意したり、発電機の貸出等を行うなどの工夫を凝らしました。こういった活動が連携企業に理解を頂けた要因ではないかと感じています。
その他、実際に計画を策定する際には、中小機構のアドバイザーと災害発生時タイムラインを作成し、連携企業も含めてみんなが動きやすい体制を整えました。タイムライン内では連携企業それぞれが地震、大雨、津波の際の一時避難場所を掲載しており、一目で分かるようになっています。このタイムラインはアドバイザーの支援を受けながら作成したものですが、他の企業への策定支援の際にも見本として扱われていると聞いています。

実際に活用されているタイムライン

計画策定後のアクションとして、実際にどのような活動をおこなっていますか?また周囲の反応はありましたか?

連携企業には携帯を1台持ってもらい、携帯内にLINE WORKSを導入し連携事業者間で掲示板を作成しました。日頃の情報伝達とあわせて、有事の際の連絡手段としています。さらに、勉強会や防災訓練等も定期的に実施しています。
また、周囲の反応としては、「マルハナさんは市内でも先行して実効性の高い連携事業継続力強化計画を策定している」ということから市内の支援機関が計画策定の話を聞きに来られたこともあります。連携企業の防災意識もあがってきており、今までは他人事だったものが自分事として捉えられるようになってきています。

勉強会や防災訓練の内容を教えてください。

毎月1回連携企業及びその他の協力会社にも声かけを行い、(株)マルハナ安全大会という講習会を実施し、防災・減災に対する講義を通じて意識を高めています。
また毎年6月頃には連携企業を含めて避難訓練及び炊き出し訓練を実施しています。避難訓練では実際に避難所まで歩いて避難経路を確認したり、当社の屋上に設置した避難場所に登る等の訓練を実施しています。炊き出し訓練では有事の際でも戸惑わずに対応出来るように実施しています。

令和5年6月に実施した避難訓練の様子

今までに実際に災害発生タイムラインに沿って動いたような事例がありますか?

令和5年6月の台風2号が来た際には災害時タイムラインの通りLINE WORKSを使い、連携企業の被害確認を行いました。直接的な被害はありませんでしたが、実際に連携事業継続力強化計画に基づいて動くことができました。
実際に動いた際の感想として「平時の時から協力をしているので、今回もスムーズに報告をおこなうことができた」と話す連携企業の方もいらっしゃいました。そういった意味では事前の準備の重要性を改めて感じました。

今後の事業継続力強化計画、防災減災について考えていることを教えてください。

発災時に当社が機能しないと、連携企業を含めて周りの企業にも負担をかけるので、発電機等のハード面での備えを充実させるなど、今まで以上に防災減災に対する意識を高めたいと思っています。
そして今後大きな地震や豪雨も予想されているため、何かあったときに、従業員等をどのようにして守っていくかを考えることが大事だと考えています。計画については、実効性を高めることが大切だと考えます。今後は連携企業だけではなく、その下請け会社ともどうやって連携していくかが課題と考えています。

企業概要

株式会社 マルハナ
代表取締役 花島 隆是(はなじま たかゆき)
静岡県浜松市南区卸本町2000番地の6