自動運転車両に乗ってまちを楽しむ~茨城県境町~
こんにちは、関東経済産業局 航空宇宙・自動車産業室です。
皆さん、「自動運転」と聞くと、遠い未来の話だと思っていませんか?
実は、まもなく道路交通法の改正が施行され、道路区間・交通状況・自車速度・気象環境等が一定の条件を満たす場合における“自動運転”が認められる見通しで、各地で自動運転移動サービス導入に向けた取組が進んでいます。
今回は、自動運転バスが実際に走る、茨城県境町の取組事例を紹介しながら、地方では困難と言われる自動運転とMaaSの社会実装について掘り下げていきたいと思います。(見出し画像提供:BOLDLY株式会社)
MaaSってなに?
茨城県境町の取組を紹介する前に、自動運転とMaaSの関係について少しだけ解説します。
来る自動運転社会に向けて、日本ではまず、2025年度をメドに、“地域限定型の自動運転移動サービス”を全国50箇所程度で実現し、本格普及に向けたノウハウの蓄積を目指しています。
自動運転は、そのレベルが1から5に区分けされており、現在は、テレビCMでもよく見る、高速道路での自動運転モードが可能なレベル3まで実車化されています。
そして、自動運転を社会実装するにあたってカギとなるのが、MaaS(Mobirity as a Service)です。
MaaSとは、例えば、スマホで行きたい場所を選択すると、バスや電車などを組み合わせた最適ルートが割り出され、予約や支払までできるような一人一人の移動ニーズに合わせたサービスのことを言います。
自動運転とMaaSを組み合わせることで、新たなビジネスや価値が生まれる期待が高まっています。
地方でMaaSは成立しない?成功のヒントは茨城県境町に
MaaSには多くの人や企業が関係し、合意形成や各々の課題が複雑に絡み合うため、地方で導入されている例は多くありません。こう聞くと、MaaSは地方には関係ないものと思うかもしれませんが、これから紹介する茨城県境町は、全国に先駆けて、MaaSを用いた自動運転移動サービスを社会実装した町です。
茨城県西部に位置する境町では、レベル2(人による前者追従など)の自動運転バスが3台運行しています。町内には鉄道駅がなく、あるのは隣町からの路線バス、東京駅を結ぶ高速バスで、町内移動は自家用車が中心です。そのため、高齢化が進む中、車を運転できない人の買い物や通院等の“生活の足”の確保が課題になっていました。そこで、「誰もが生活の足に困らない町」を目指して、2020年11月に国内で初めて、公道での自動運転バスの運行を開始しました。
自動運転やMaaSは、まちづくりの1ピース
境町の取組の特徴は、財源確保の方法と、まちづくりとの調和の2点です。
自動運転車両への乗車運賃は無料です。その財源は?というと、半分は国からの補助などですが、実は境町はふるさと納税による寄付額が関東1都6県で5年連続1位となっており、そのほかにも企業版ふるさと納税等による収入があることから、これらを有効活用しています。
また、走行ルートをみると、スーパーマーケットや病院など生活に密接した施設のほか、隈研吾氏がデザインした「道の駅さかい」をはじめとした目玉となるスポットが多く含まれており、乗客が行きたいと思うところに移動ができるよう設計されています。
この2つの特徴に共通することは、自動運転やMaaSの取組を、まちづくりの1ピースとして位置づけているということです。まちづくりのコンセプトがはっきりしているため、境町には、ファンが多くいるのですが、こういった戦術を持って進めていくことが、これから社会実装を目指す地域にも必要なのではないでしょうか。
自動運転やMaaSの社会実装を加速させる取組
経済産業省では、自動運転の車が走る地域をもっと広げるため、Road to the L4プロジェクト(レベル4等の先進モビリティサービスの研究開発・社会実装プロジェクト)等を実施しています。
私たち関東経済産業局でも、境町のようなMaaS、自動運転等を用いたサービスの社会実装を加速させる取組を進めています。その一環として、今回紹介した境町などの先進事例を報告書として取りまとめました。ぜひ御覧ください。
◆地域MaaS社会実装のための収益モデル調査とりまとめ ~自治体と企業の連携による持続性のあるMaaSの実現に向けて(経済産業省関東経済産業局)(2022年3月)を公表しています。