「エシカル消費」で外食産業を支えます~関東食糧株式会社~
近隣に海がない埼玉でも種類豊富な魚介類の提供を
-貴社が取り組む、特徴的なエシカル消費を教えてください。
三陸・常磐ものネットワークに参加し、三陸・常磐地域で水揚げされた魚介類を定額(10,000円前後)の鮮魚セットにして、飲食店に定期便でお届けするサービスを行っています。
我々はもともと食品卸として冷凍食品、穀物、調味料をメインに扱ってきましたが、水産仲卸業の企業をグループ化したこともあり、魚介類をもっと良いかたちで提供したいという思いがありました。また、新幹線が発着する大宮に東北の食材を持ち込む動きや新幹線物流の活用の流れもあり、埼玉から離れた産地のモノを鮮度よく持ってきたいと考えていたのです。そんな時に、漁港から直送でお届けするサービスに行き着きました。
2023年9月6、7日に弊社主催の業務用食材展示会「フード・クリエイト・エキスポ2023」を開催し、サービスの紹介をしたところ、大きな反響がありました。福島第一原発の処理水が海洋放出されるタイミングと重なりましたが、産地の良いものを再発見し、再評価し、それらを販売することを通じて、飲食店や外食の魅了が高まるお手伝いができればと思っています。
-商品を購入された方の反応はいかがでしょうか。
種類豊富な魚を楽しむことができると高く評価いただいております。埼玉県内には、いくつか魚市場がありますが、周りに海がないことに加え、魚市場が衰退しているので、流通する魚が限られてしまいます。鮮魚セットの中身は季節によって異なり、毎回異なる鮮魚が届くので、飲食店のメニューに新たな食材を取り入れることができます。我々は鮮魚セットのクオリティを高めるため、買い手の要望を聞き取り、産地に伝えたりしています。
現在、鮮魚セットは1漁港からのみ取り寄せていますが、取引先となる漁港を増やしていきたいと考えています。産地で消費され、埼玉まで流通しない魚もあるはずなので、実際に産地へ足を運び、地元の良いものを発掘したいです。
「地産地消」の促進、ヨーロッパ野菜を身近なものへ
-ヨーロッパ野菜の普及にも貢献されたそうですね。
はい、さいたま市を中心に若手農家、レストランなどが協力して市内産のヨーロッパ野菜の栽培・普及を行っている「さいたまヨーロッパ野菜研究所」(ヨロ研)の活動に2014年から加わりました。当初は馴染みのない野菜として「際物」扱いされていたヨーロッパ野菜ですが、今では近隣のスーパーでも見かけるようになり、一所懸命に取り組んで良かったと思っています。
-どのような活動をされたのでしょうか。
我々が活動に加わる前、ヨロ研は業務用の野菜を取り扱う仲卸を通じてホテルやイタリアン、フレンチレストランに対し、栽培した野菜の販売を試みるも、思うように売れず苦労されていました。
その頃、我々も野菜を取り扱いたいと考えており、元々野菜の取り扱いをしていなかった当社が、八百屋と同じような野菜を売っても成功しないと考え、あえてヨーロッパ野菜を取り扱うことにしたのです。
まずチーマ・ディ・ラーパ(日本でいうところの菜花)やカリフローレなどの野菜を販売したのですが、当初は洋食業態にしか売ることができませんでした。生産者から「売れずに畑で腐っていく野菜を作ることは耐え難い」という声も届き、対応に悩んだ挙げ句、我々が野菜を買い取り、いろいろな取引先へ配ってみることにしたのです。とにかく多くの方に知ってもらいたいという一心でした。
やがて、お寿司のネタや居酒屋メニュー、中華料理でも美味しくいただけることが分かり、テレビの取材を受け、話題になりました。話題となったことで取引先も増え、売上も徐々に大きくなり、現在に至ります。
これらは、ヨーロッパ野菜の種を扱う種屋さん、農家さん、中間流通業者の我々、レストラン(外食店)、さいたま市産業創造財団のバックアップが運良く揃ったので成し遂げることができたと考えています。
-ご苦労されましたね、現在ヨロ研が行っている特徴的な活動はありますか。
ヨロ研で栽培した野菜は、さいたま市内の給食でも使われています。また、ヨーロッパ野菜を使った給食をレストランのシェフが提供する「シェフ給食」も実施しています。子供達にも、給食を通して、さいたま市で栽培されるヨーロッパ野菜について知ってもらうことを期待しています。
更に、さいたま市教育委員会と協力し、農家が授業を行うなど食育の活動もしています。ヨロ研が発足してから10年ですが、活動の幅が広がって嬉しく感じています。
社長室は「食空間ベース」、経営理念「人源」とともに
-経営する上で大切にされていることはありますか。
オフィス作りにはこだわっています。遊び心も加え、帰ってくるとホッとする空間にしています。
倉庫と一体となった社屋はガンダムで登場する、宇宙空母のホワイトベースにちなみ「食空間ベース」と名付けています。社長室は艦長室となっており戦う基地です。棚には特注で作っていただいた、関東食糧カラーのホワイトベースも飾っていますよ(笑)。また、ガンダムやスティーブ・ジョブズに関連した置物、ワインを並べ、趣味がありふれる空間にしています。まずは、社長の私からこういった雰囲気作りを行うことで、社員が楽しく、モチベーションをアップしながら働くことができればと考えています。
また、先代の父から、経営理念の「人源」を意識するよう、常々言い聞かせられました。「にんげん」と読みます。社員一人一人の成長が関東食糧の成長、食は人を良くするもの、人に大切なもの、最善の食を提案していくのだと。目に留まるように、社長室の壁に大きく描いてもあります。
新型コロナウイルスが流行し、売上がかなり落ちた時がありました。人員整理をしなければならない状況にあった時、経営理念を思い返し、勇気づけられたものです。大変な選択を迫られた時に、経営理念に立ち返り、何をすべきか、大切にしなければならないことは何かと考えました。
-今後の展望をお聞かせください。
今後、高齢化社会・人口減少に伴い、外食産業は徐々に衰退していくでしょう。そこで、「メディカルケア部」という高齢者介護施設に特化した専門部隊を作り、医療、介護、福祉などの施設に向けた販売に注力しています。
働き手が足りない状況の中、医療、介護、福祉などの施設では毎日3食を調理して提供することが難しくなっています。お湯に入れるだけで簡単に一品できるもののみならず、歯茎で潰せるもの、高タンパクな食品をはじめ、高機能性食品を提供することで、調理の負担を軽減できればと思っています。
また、病院や介護施設が参考にできるメニューのご提案も行っています。売上に占めるメディカルケア部門の割合が伸びているので、引き続き力を入れていきたいですね。
-最後に一言お願いします。
我々の仕事は、外食産業に関わる生産者やプロの料理人と消費者を繋げ、価値を高めていくことだと考えています。
我々なりの「エシカル消費」に取り組んで、地域、外食産業を盛り上げていきたい、そんな気持ちで突き進んでいきます。
【企業概要】
関東食糧株式会社
代表者:代表取締役 臼田 真一朗
所在地:埼玉県桶川市大字川田谷2459-1
三陸・常磐ものネットワークの取組
経済産業省では、復興庁や農水省と協力し、昨年12月に「魅力発見!三陸・常磐ものネットワーク」を立ち上げ、ALPS処理水の海洋放出に伴う風評被害の発生を防ぐことを目的に、政府機関、自治体、産業界等が連携して、「三陸・常磐もの」の魅力を発信し、消費を拡大する取組を実施しています。
本ネットワークは、産業界、自治体等から広く参加を募り、三陸・常磐地域の水産物の“売り手”と“買い手”を繋げることで、「三陸・常磐もの」の魅力を発信し、消費拡大を推進するプロジェクトです。専用サイトから取組事例や利用可能なサービスをご覧いただけます。