経営力向上計画をきっかけに、人手不足の解消&経営のモニタリングに取り組む!
今回取材したのは、東京都立川市に本社を置く『株式会社ウオールナット』です。
同社は、土木構築物の調査計測サービスと機器開発を行っており、「斬新な発想と創意工夫の機動力で社会生活の安全を守る」という経営理念のもと、インフラ土木構築物の調査点検業務を展開しています。老朽化が急速に進んでいるトンネルを始めとするインフラメンテナンス事業を主力とし、トンネル等を点検・調査する際は、空洞探査や目視調査、ドローンを用いた調査など様々な調査方法を取り入れています。
同社の齋藤社長は創業以前、地雷探査技術の関連部門で働く会社員でしたが、その事業部門を引き受ける形で31歳の時に独立しました。今回は経営力向上計画の申請に至った経緯、目指していく会社像についてお聞きしました。
-どういった経緯で経営力向上計画に申請されたのですか?
当社は、かつてトンネル内を点検・調査する際は、従業員が現場に出向き目視で行うという手法を取っていました。しかし、現場が全国各地に点在しており、従業員数30人規模の会社で対応するには派遣コストが高くなってしまうことに加え、トンネルの調査ニーズが徐々に高まったことにより発注数も増加し、増え続ける需要に追い付かず人手不足の状態に陥っていました。
現場に出向き人の手を使って調査すると、どうしても時間も人的コストもかかってしまうため、なんとかテクノロジーで解決できないかと考えていたところで経営力向上計画のことを知り、設備投資を行うことができれば人材不足を解決することができるのではないかと考え、検査装置やクラウド化を実現するためのソフトウェア開発費を経営力向上計画で申請し、支援措置を活用させていただきました。
検査装置を搭載した車を走らせたり 、トンネル内でドローンを飛ばすことによって、トンネル内を撮影したデータをクラウド化し、担当者が現場に赴かなくても検査ができるようになりました。例えば、九州在住の担当者が会社や現場に足を運ぶことなく、クラウド化したデータを自宅で点検・検査を行うといった事例もあります。
経営力向上計画の策定が、当社のボトルネックだった人材不足を解消するきっかけとなりました。
-経営力向上計画の申請にあたっては、B類型(収益力強化設備)を活用されていますが、準備書類も多く大変だったのではないですか?
経営力向上計画では、中小企業経営強化税制を活用するために、投資する設備について記載する必要があります。当初は、工業会の証明書を取得すればよいA類型(生産性向上設備)で申請しようと思っていたのですが、投資する設備の要件が合わず断念しました。
その代わりにB類型(収益力強化設備)で申請を行いました。B類型は、年平均投資利益率が5%を超える設備投資計画を作成して、国の確認を受けることになります。例えば、自社で開発した製品など工業会の証明書が取得できない場合であっても、対象とすることができるのでとても助かっています。B類型はA類型と比べると提出書類の数が多く大変なところもありますが、A類型では対象外の設備も対象にすることができるほか、工業会証明書の発行手数料がかからないところもB類型の良い点だと思います。
-経営力向上計画を策定したメリットを教えてください。
以前は紙媒体で申請していましたが、電子申請が始まってからは策定のコストが軽減されて申請のハードルがかなり下がりました。
当社は中小企業診断士やコンサルの方ともお付き合いはありますが、経営力向上計画や助成金の申請書はすべて自社で作成しています。申請を行うたびに今の経営状況を振り返ることができ、投資計画を見つめ直すきっかけになるためです。特にローカルベンチマークは積極的に取り入れていて、申請当時と今の経営状況を比べて、数値がどれぐらい上がったか、下がったかを比較しながら、自社の経営指標を判断する上で参考にしています。すべて自社で策定しているので大変なこともありますが、それが後に自社の血肉となると感じます。また、当社の場合は経営力向上計画と経営革新計画がリンクしていて、経営革新計画を要約して落とし込んだものが経営力向上計画になっています。これらの支援ツールを通じて自社の経営計画を見える化したことで、売上高前年比率10%増を達成することができ、従業員も徐々に増やしていくことができました。自社の計画を分かりやすく簡潔にまとめることができたので、経営力向上計画の申請をしてよかったと思います。
-今後の目標について教えてください。
今後はトンネルの点検・調査の受注数をもっと増やしていきたいです。トンネルなどのインフラは老朽化が進んでおり、点検・調査による安全確保は急務です。市場のニーズに応える形で当社の事業も拡大させていくことが目標です。
また、会社を経営していくうえでは、従業員の育成に力を入れています。
このため、何事もトップダウンではなく、従業員と二人三脚で事業を進めていくことを心掛けています。売り上げや社内の経営状況をブラックボックスにするのではなくオープンにすることで、従業員のモチベーション向上にも繋がっていくと考えるからです。実際、当社では私のほうから売上のノルマを課すことはなく、社員のほうから売上目標を掲げてきています。
今後も、社員とコミュニケーションを図りながら、社内が明るく、常にみんなが笑顔でいられる会社であり続けられるように様々なことにチャレンジしていきたいと思います。
【企業概要】
株式会社ウオールナット
代表取締役 齋藤 豊
東京都立川市幸町1-19-13