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社員の知恵が年間1,000件以上!社長と社員をつなぐ経営計画と改善提案

経営者の情熱を発信していく“Project CHAIN”。第2回目は、静岡県富士市にある金子歯車工業株式会社の金子佳久社長にお話を伺いました。
同社は、金子社長の祖父が1939年に「金子歯切鉄工所」を創業したことが始まりで、軍需産業や製紙産業を経て現在は国内外に1,500社以上の顧客を持つ歯車の専業メーカーとして日本のものづくりを支えています。

幼少期から意識していた「社長」。力試しに東京に出た3代目が経営を学ぶまで。

-金子社長の学生までのお話について教えてください。

祖父が初代、父が2代目社長として働く姿を見て育ったので、幼少期から社長になることは意識していたと思います。
しかし、成長するにつれて「会社を継がなければならない」というレールに乗ることへの反発心も生まれ、最終的に金子歯車工業を継ぐことは当時から決めていたものの、自分の力を試したいという思いも強く、大学卒業後は東京で就職し、営業職の道へ進みました。

-営業職から金子歯車工業の社員となり、感じたことはあり
ましたか。

営業職を経て、地元に戻って金子歯車工業に入社しました。会社に入って最も驚いたのはお客様が仕事を紹介してくれること。金子歯車工業では、複雑かつ高度な要求に長年対応してきた技術力を信頼して「金子さんにお願いしたい」と仕事が集まるのです。こうしたお客様から寄せられる信頼を目の当たりにして、金子歯車工業を今後も続いていく会社にしたいと思い、経営について勉強しようと決意しました。

「こんな会社にしていきたい!」経営者同士で切磋琢磨しながら経営計画を思い描いた日々。

-どのように経営計画を作られたのでしょうか。

どのように経営の勉強をすればよいか分からなかったので、まずは地域の若手経営者が集まる勉強会に参加しました。そこで「会社の経営計画を策定して社内で発表する」という目標を掲げました。そのために企業経営のための組織運営や心理学を学んだり、1日3通お客様への感謝のはがきを書いたり…とにかく色々なことをしましたね。週末には泊まり込んで勉強しながら、経営者同士で語り合ったことを覚えています。

-経営計画の策定に明け暮れた1年間。計画を発表して社内はどう変わりましたか。

実は策定した経営計画を発表できませんでした。経営計画の策定に向けて1年間勉強しましたが、私が幼少の頃からずっと会社を支えてきた社員の皆さんを前にすると、経験も知識もなかった私は萎縮してしまいました。作り上げた計画を実践することができず苦しかったことを覚えています。
しかし、あれだけ頑張って描いた経営計画をそのまま諦めたくなかった。そこで地域団体の会合やお祭りなどに参加して、他の経営者からビジョンの共有方法やプロジェクトの進め方を学びました。そこでの挑戦や失敗が経験となり、臆せずに自分の思いを社員に共有できるようになりました。
当時「現場の職人も含め社員全員がPCを使えるような鉄工所にする」という経営計画を立てましたが、あの頃に思い描いた経営計画は達成できました。
現在も社員に1年の経営計画を発表していますが、経営者として思い描く理想を社員に伝えられる、これ以上に幸せなことはありませんよ。

インタビュー中の金子社長。若い経営者にも自分で経営計画を書くことの大切さを伝えている。

隠れた社員の”チカラ”を発掘する「改善提案活動」

-社長の思いを具現化させたことの1つに「改善提案活動」があるとお聞きしましたが。

社員が現場の問題を発見し改善策を考えて、社内で発表する機会を設けています。当時の工場長が旗振り役を買って出てくれました。新入社員を含め社員のみんなが盛り上げてくれたこともあり、2009年に開始して、これまでに7,000件を超える改善提案が寄せられました。

改善提案活動発表会の様子。優秀な改善提案には豪華賞品もあり盛り上がりを見せる。

-社員自身がより良い会社にしていく、素晴らしい社内文化ですね。

この活動を通じて社員は自発的に動くようになりました。当社の社員は「改善提案」を常に意識しているので、現場で不具合が見つかっても「改善提案に使える」と前向きに捉え、現場の効率化につなげています。昨年は1,222件の改善提案が生まれましたが、これら「社員の知恵」が当社を支えています。
また、「改善提案活動」で社員の持つ意外な特技が分かってきました。社員の多くは「機械オペレーター」として入社していますが、ある人はイラストが上手であるとか、ある人は分析が得意だとか分かりました。こうした各社員の“チカラ”を活かせるようにしていきたいですね。

-今後、どのような会社にしていきたいですか。

まずは社員がモチベーションを持って仕事ができることが大切です。社員が諦めないで仕事に向き合い、お客様から信頼してもらえる環境をつくっていくことが私の役目です。
また、先代が私に残してくれたこの会社を後任が継ぎたくなるような会社にしていけるよう、日々変わりゆく世の中に会社が対応できるようにしていき
たいです。

今年1か月で既に129件もの改善提案が寄せられている。

【企業情報】
金子歯車工業株式会社
代表取締役社長 金子 佳久(かねこ よしひさ)
静岡県富士市厚原291-4
URL:http://www.k-gear.co.jp/home.html

-編集後記-
社長が経営計画という指針を社員に示して、社員が現場から日々改善提案をし続ける。そうして社長と社員との間で培われるコミュニケーションが1,500もの顧客から信頼される「KANEKO」クオリティを支えていると思いました。金子社長と社員の皆さんとの間で構築される絆も1つの鎖(CHAIN)ではないでしょうか。
                            担当特派員Y


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