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若者からの応募が殺到!ブランディングを強化した鉄工業の魅力。

経営者の情熱を発信していく“Project CHAIN”。第9回目は、静岡県沼津市にある株式会社影山鉄工所の影山彰久社長です。同社は、建設関連の鉄骨製造業を営んでおります。3代目社長に就任後、自社のブランディングを進めるとともに4度のM&Aを通じて会社を成長させている影山社長にお話を伺いました。

ここが鉄工所の事務所!?

-貴社訪問の第一印象は「まるでカフェに居るみたい!」でした。従業員さんも若いですね。

月に何人かは「やっていますか?」と、カフェと間違えて入って来られますよ。
弊社は建設用の鉄骨を製造する事業からスタートしましたが、現在では中小企業の人財活用(HR)やブランディングをサポートする事業も手掛けています。製造業においてもブランディングは極めて重要だと考えています。
その一環として、弊社自身フリーアドレスを導入しておりまして、毎朝出社後にくじ引きをして、当たった場所がその日の自分の席になります。製造業の仕事は図面等が多いので、席が固定されていると書類の置きっぱなしや、積み上げたままにしてしまいがちです。雑然とした職場は見栄えが悪く、若い人から敬遠される一因にもなりますし、仕事の効率にも悪影響を及ぼすと思います。
フリーアドレス制にしてからは、社員全員が整理整頓に気を使うようになりました。他にも日報のスマホアプリ化やSlackの導入など、仕事の効率化を進めています。また、部署ごとに出社日を決めて、テレワークも推奨しています。このような取組を進めた結果、若い人が弊社に関心を持ってくれるようになり、社員の平均年齢は、工場勤務が20代、オフィス勤務は30代前半と若返りが進みました。


会社の外観や事務所のフリーアドレススペースなど

入社後すぐにリーマンショックに直面。必死の営業活動で乗り切り、様々な改革に着手。

-影山鉄工所を継ぐことは子供の頃から意識していらっしゃったのですか?

私は、ブルーカラーで3Kの鉄工業によいイメージを持っていなかった時期もあり、大学卒業後は、コンサルティングの会社に就職し、北海道で従業員教育等を担当していましたが、父の病をきっかけに26歳の時に沼津に戻り影山鉄工所に入社しました。
小さい頃から、祖父や父からは、事あるごとに家を継ぐことを伝えられており、よく工場にも連れていかれ、工場には親しみがありました。そのため子供ながら家業を継ぐイメージは、自然ともつようになっていました。今思うと当時から祖父や父に擦り込まれていたのかもしれませんね。

-入社してからのご苦労はありましたか。

入社2~3年後、リーマンショックにより売上げが大きく落ち込みました。当時は家族以外の従業員は4~5人ほどの会社でしたので、私自身で新たな顧客を開拓するための営業活動をスタートさせました。しかし、弊社には大きな強みがなく、他社とは価格で勝負するしかありませんでしたが、それには限界を感じておりました。そこで、他社と価格以外で差別化を図るために始めたことは、お客様が「何に困っていて」「何をしたら喜んでもらえるのか」を第一に考え、お客様のお困り事を解決するような営業を行うことでした。その一例として、社屋の拡張や移転を考えているようなお客様に対しては、近隣の空き用地の情報を入手し、それを分かりやすく整理して提供するなど、少しでも弊社の仕事に付加価値や差別化を生むことが出来ればと考えて、何でもやりました。
祖父から続く会社がなくなってしまうのは嫌だという思いと、経営者として勝負のステージに立てないままでは終われないという思いで、必死に努力しました。お客様の「かゆいところに手が届く」ような地道な営業を大切にしてきた結果、半年から1年経ってようやくお客様にも弊社を認知いただけるようになってきました。

ブランディングの第一歩は、自社の魅力を伝えること。

-危機を乗り越えられた後、どのような取組に着手したのでしょうか。

その後、私は社長に就任しましたが、最初に取り組んだことは広報担当者を採用することでした。その背景は、人材確保に苦戦していたからです。製造業にも様々な魅力があると思うのですが、それが若い人にうまく伝わっていないのではないか、という問題意識がありました。そのためにも、ブランディングが必要だったのです。最近では「オープンファクトリー」など、ものづくり企業が生産現場を外部に公開するような取組も増えてきましたが、当時この業界には外部の人を工場に入れない・見せないという慣習がありました。そこで私は、ホームページやSNSなどを活用し、工場を積極的に見せていくことで、製造業の魅力を伝えていくことを目指しました。例えば、弊社ホームページのトップサイトは製造業のイメージとは大きく異なるビジュアルを採用しています。社屋をカフェのような内外観にしたのもその一環です。これらの取組の結果、これまでは採用応募者数は、毎年1~2人程度でしたが、最大で1か月に200人もの応募が寄せられるまでになりました。今でも毎月平均40人くらいの応募があります。
また、現在の従業員数は69人なのですが、社員が増えることで、社員同士のコミュニケーションの必要性も感じるようになりました。そこで社員に対して会社のことを幅広く知ってもらうため、月1回の社内報の発行を開始しました。社内報には社員紹介などを掲載しており、社内コミュニケーションのきっかけになるのはもちろん、社員のご家族へも送付しておりますが、社内報が届くのを楽しみにしているご家族もいらっしゃるようで、社内や周囲の連携・ご理解も深まったように思えます。


デザイン性が高く、採用の増加にも大きく貢献している”魅せる”HP
(画像提供:株式会社影山鉄工所)

-他にも、どのような取組を進めているのですか。

弊社では、ビジネスを強化していく過程で、企業ブランディングの他にも、IT技術、人材活用ノウハウ(HR)を培ってきました。それらのノウハウを活用して、技術はあるが経営者の引退等で事業継続に悩まれているようなものづくり企業(鋳造や金属加工等)とのグループ化(M&A)を進め、社会の変化に対応できる企業グループの構築を進めています。社長就任以来4度のM&Aを実施しましたが、弊社グループに加わった企業には、弊社の強みを活かしたコンサルティングを行って各社を成長させていきます。
社長就任時には売上高8億円でしたが、これらの取組を通じて現在はグループ全体で売上高58億円にまで成長することができました。

私は、常にエンターテイナーでありたい!

-会社を成長させるために様々な取組を積み重ねていますが、その思いや情熱はどこから湧いてくるのでしょうか。

私のやりがいは、社員の成長や喜びです。例えば、日当だった給与制度を月給制にしたことで、若い社員から「ローンが組めるようになったので買えなかった車が買えるようになりました!」「安定した収入を得られたので結婚することができました!」など、喜びの声が多く寄せられました。とても嬉しかったですね。
私は、社員に成長や喜びを提供するエンターテイナーでありたいと思っています。一生懸命頑張っている社員が楽しめる舞台を作ってあげられるような工夫をしていきたいです。さらには、社員だけではなく、社員のご家族、地域の方々、お客様にも楽しんで、喜びを感じていただける舞台にしたいと思っていますし、その取組を今後も加速させていきたいです。


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【会社概要】
 株式会社影山鉄工所
 代表取締役 影山 彰久(かげやま あきひさ)
 静岡県沼津市西間門28-3
 https://kageyama-co.jp/


-編集後記-
インタビューの際も社長は、常にエンターテイナーで私たちを楽しませてくださいました。そんな社長の想いが“Project CHAIN”のように従業員の皆さんに伝播し、影山鉄工所に関わる皆さんの間で良い関係性が構築されたことも、同社の大きな成長を支えていると感じました。
                         担当特派員 HN