円滑な事業承継につながった経営革新計画
株式会社佐野機械は、昭和35年に現社長である佐野哲也氏の祖父佐野清氏が製紙機械の設計製作を生業とし創業しました。令和4年9月に父である佐野勝由会長から哲也氏が代表を引き継ぎ、来年で65年目を迎える地域の老舗企業です。特に、機械内部の搬送用ベルトの蛇行防止技術に強みを有しており、昭和40年頃に最初の装置を開発、平成15年には新型機を開発し特許を取得するなど、高い技術力を持って商品を全国に提供しています。蛇行防止装置の製造に特化した事業者は全国でも数社のみで、ニッチ分野において存在感を高め大手企業からも信頼を得ています。求められるニーズが多様化する中、課題に向き合い成果を出しながら、事業承継や補助金活用にもつなげた戦略的な経営革新計画の活用について、佐野哲也代表取締役社長にお話を伺いました。
-どのような経緯で経営革新計画にチャレンジしようと考えたのでしょうか?
近年、製紙機械の質向上に伴い、蛇行防止装置においても高い性能が求められていたため新製品構想を練っていました。しかし、開発に係る時間と人件費を捻出することができず、思い通りに進まず悩んでいました。そんな時に富士市商工会と静岡県商工会連合会から経営革新計画を紹介されました。当時の私は専務という役職で、近い将来、事業承継をするタイミングでもありました。経営革新計画を作成することで、世の中のニーズに応えるための新製品開発を具体的に進められると共に、代表になる上で会社や経営について改めて勉強できると考え、チャレンジすることに決めました。
-経営革新計画に取り組んだ感想を教えてください。
私は大学院でベアリング等の研究をしており論文を書くことが多く、その経験からか、経営革新計画の作成にとても苦労したという感じではありませんでした。目標に向かっての課題を明確にし、それを解決する策を検討、そして結果をどう出していくかを論理的に考えるのは得意な方だったのでストレスなく取り組めました。難しかったのは数年後の売上数値を示すことでしたが、その点は商工会の方にかなり助けてもらいました。今まで資金の流れや原価を細かく精査した経験がなかったので、経営革新計画はこういった点を改めて認識するきっかけになったように思います。
-経営革新計画を活用されたことでの成果を教えてください。
経営革新計画の承認後は、本計画をもとに新製品開発に取り組み、成果として付加価値額と経常利益率を高めることができました。加えて、蛇行防止装置はもちろん、それに関係する知識も深まり、大手企業も含め当社に相談をしてもらう機会が増え、取引先からの信頼が高まっていることを実感しています。
そして、経営革新計画を機にものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金にもチャレンジし採択されました。設備導入による生産性向上の実現、HP改修等による販路開拓を実現し、我々の規模に合った改革を順次進められてきています。
また、事業の成長とは少し外れるかもしれませんが、今振り返ると事業承継にも一役買っていたように感じます。経営革新計画は自社の強みや課題を洗い出しますが、私にはわからない点は父に聞いていました。この些細なコミュニケーションが円滑な事業承継につながっていたように感じます。
-経営革新計画を活用することでのメリットはどのような点でしょうか?
製品開発から生産までの中長期的な視点で経営計画を策定することで、自社の強みや課題が明確になりましたので、代表になる前に改めて会社への理解が深まった点がとても良かったです。また、これから事業承継を予定されている方が主体となって作るのにはとても良いツールだと思います。会社の状況を理解していないと作れないものですし、知らないことがあれば現代表に聞くことになりますので普段コミュニケーションをとりづらい間柄でも会話のきっかけになると思います。スムーズな事業承継につながるひとつのきかっけになる点もメリットではないでしょうか。
-改革と共に成長路線を歩んでおられますね。今後のビジョンを教えてください。
まずはメーカーとしての責任を全うしたい。日本全国だけでなく海外の取引先の工場にも当社製品が入っていますので、アフターサービスも含めてこの市場で価値を提供し続けていきたいです。そして、今までもそうでしたが生産性向上や業務効率化を図ることで生まれる時間を使って、地道に次のチャレンジをしていくことを継続していきます。「続けていく」ことを大切に、今後も取り組んでいきたいと考えています。
【企業概要】
株式会社佐野機械
代表取締役社長 佐野 哲也(さの てつや)
静岡県富士市久沢223