見出し画像

事業再構築補助金を活用した支援機関のチャレンジ~事業者支援と金庫職員育成を目指すハイブリッドな取組~

事業再構築補助金は、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応するための新たなチャレンジを応援する補助金です。
具体的には、新たな製品・サービス等を製造・開発等することにより、主たる業種を変更するといった「業種転換」、主たる業種又は主たる事業を変更することなく新たな製品・サービス等を製造・開発して新たな市場に進出するといった「新分野展開」など、企業に新たな付加価値を生み出し、賃上げなどに繋がる取組を支援するものです。
コロナ禍による売り上げ減少に直面したピンチを乗り越えるために事業再構築補助金をどう活用したのか。アフターコロナにおける新たな成長に向けて、どのように活用しているのか。第一歩を踏み出した事業者の挑戦を紹介していきます!

今回は、事業再構築補助金の支援を担うしずおか焼津信用金庫の取組を紹介します。しずおか焼津信用金庫は、昭和6年1月17日設立の静岡県内に62店舗を構える静岡・焼津地域に根ざした金融機関です。「誠意を尽くし、挑戦を続け、地域社会と共栄する」という行動指針を掲げ、創業期、成長期、成熟期以降に分け、地域事業者に寄り添ったきめ細やかなサービスを提供しています。相談プラザという拠点を静岡、焼津、藤枝に構え、融資だけではなく、創業や各種補助金、販路開拓、海外進出など企業のライフステージに応じた適切なサポートを行っています。

また、コロナ禍による地域事業者の苦境を打破するべく、取引先からの問い合わせが多かった「事業再構築補助金」への取り組みを強化。採択を目指すだけではなく、事業者の成長も見据えた質の高い支援を実施しながら金庫職員の成長も見据えた取組を行っています。事業再構築補助金をどのように活用しているのか、お客様サポート部の補助金チームである松本調査役、小野副考査役、岩堀係長、市井さんにお話を伺いました。

店舗を訪れたお客様との対話の様子。事業計画書の作成支援から、
融資を含めた再構築事業のフォローまでを一気通貫で実施。

-どのような経緯で、事業再構築補助金の申請支援をすることになったのですか?

静岡県には、地方銀行が4行、信用金庫が9庫あるなど、県内を営業エリアとした金融機関が多く、競争が激しい地域です。当金庫は、そのような環境下においてもお客様に選ばれるために資金支援である融資と共に、お客様の本業支援に力を入れていこうという方針を掲げています。
我々が所属しているお客様サポート部は10年前に設立され、お客様の本業支援を積極的に行っています。事業再構築補助金が創設される前から、ものづくり補助金や経営力向上計画といった中小企業施策を活用した支援の実績がありましたので、コロナ禍で事業再構築補助金の第1回公募が開始された際に、数多くの相談が寄せられました。

-支援に向けた金庫内の体制について教えてください。

お客様サポート部は、当金庫の本部内にある部署で、約30名で構成されており、そのうち補助金チームは4名で活動しています。
まずは、ご相談をいただいたお客様のもとに営業店の担当者と訪問し、お話を伺うことからスタートします。お客様を訪問する際は、必ず営業店の担当者を同行させています。お客様サポート部がどんな話をしているのか、そこからどのようにお客様と事業計画書を作り込んでいくのか、その過程を一緒に経験してもらうことで、職員育成も兼ねているためです。面談回数は2~3回程度で、事業計画書は1~2ヶ月程度で仕上げるイメージで取り組んでいます。過去には1人の担当者が6~7社程度担当することもありましたが、お客様と綿密なコミュニケーションを取り支援の質を担保するため、各公募回平均で2~3社程度にすることを意識しています。
また、独自に記載すべき事項を網羅した事業計画書のひな形を作成しました。これを活用すれば、営業店担当者がお客様の話を聞きながら、事業計画書の大枠を作ることができますし、お客様の頭の中を整理することもできます。このように、金庫全体で対応できる体制を整えています。

-今までの支援の中で印象的な支援事例はありますでしょうか?

商工会議所と行政書士と連携して支援した事例はとても印象に残っています。内容としては、居酒屋を経営している飲食店が介護施設向けの給食事業に新分野展開をするという事業再構築の取組です。本件では、事業計画書作成に向けて、まずは経営デザインシートを活用することでビジョンを明確にしました。そのことによって、事業再構築にチャレンジするストーリーがはっきりし、お客様を含め、各支援機関が共通認識を持ちながら事業再構築の取組を進めることが出来ました。
当金庫は販路開拓支援としてビジネスマッチングを実施し、行政書士は電子申請時の支援を行うなど役割分担のうえ支援しました。その結果、無事に採択となりました。単独での支援では行き届かない部分もあるので、地域支援機関と連携しながら地域のお客様を今後も手厚く支援していきたいです。

このように支援を行ったお客様が採択され、チャレンジの一助になれた時はとても嬉しいです。採択されたお客様からお礼の電話をいただいたり、相談プラザにお礼を言いにお越しいただいたりした時は、非常にやりがいを感じる瞬間です。また、営業店担当者も支援に関わる仕組みなのでお客様からの感謝の報告は、営業店職員のモチベーションアップにも繋がっていると思います。

-その他、事業再構築補助金の活用に向けた取り組みなどは行っていますか?

職員向けとお客様向けにセミナー等を開催しています。

職員向けセミナーでは、我々が講師となり、営業店担当者向けに事業再構築補助金の概要や事業計画書のポイント等をレクチャーしています。また、関東経済産業局にも協力いただき、金庫職員に向けた事業計画書のブラッシュアップセミナーやお客様向けの個別相談会などを実施しています。個別相談会では、人材育成の観点から金庫職員も同席するなど、関東経済産業局が持つノウハウを得られるよう工夫しています。

また令和4年4月より本業支援の強化と人材育成を兼ねて金庫独自の取組として補助金マイスター制度を開始し、事業再構築補助金を含め支店担当者がメインに支援ができる体制作りを進めています。

多種多様なお客様の課題に対して、支店との連携を図り専門職員がサポート。
3つの拠点を設け営業地域をカバー。

-今後の事業者支援はどのように取り組んでいく方針でしょうか?

事業再構築補助金は事業計画書をしっかりと作り込むことが重要だと思います。事業計画書を作成のためお客様と対話をする際、センシティブな部分についてもお話をお伺いすることになりますので、信頼関係を構築できるよう常に気をつけています。
余談ですが、そうした取組を続けるうちに、お客様と対話するためのヒアリング能力が身につき、しっかりとお客様の思いや新規事業の課題を深掘りしていく力が身についた実感があります。事業再構築補助金の支援をきっかけに今まで取引がなかったお客様と新たな取引に繋がった例もありますので、そういった機会を増やしていければと思っています。

今後は、事業計画書内で求められる市場規模等の客観的なデータを職員が効果的に活用し、金庫内の稟議等に反映できればと考えています。財務内容だけで判断するのではなく、業界動向の客観的データ等を根拠とした説明が出来ると幅広いお客様に対して支援を広げられるのではないかと考えています。
また、自治体との連携も深め我々の支援を広く届けられるよう取り組んでいきたいです。

■概要
しずおか焼津信用金庫
昭和6年1月17日設立
静岡県静岡市葵区相生町1番1号