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地域にインバウンドの交流拠点をつくる!建設会社の新しいチャレンジ。

経営者の情熱を発信していく“Project CHAIN”。第15回目は、群馬県高崎市でインバウンド(訪日外国人旅行者)向けのゲストハウス「まといホステル&バー」を運営する、株式会社ワイズテクノの吉田恭子取締役です。

2023年2月のオープン以来、ここには様々な外国人観光客が訪れ、地元の人も含めた交流の拠点となっています。建設業である同社がゲストハウスを始めた理由、そして吉田さんの地域活性化への思いを伺いました。

コロナ禍をバネに、念願の観光分野へ

-バーに飾られている大きなだるまがとても印象的ですね。

インバウンドの方は必ずと言って良いほど、このだるまの写真を撮っていかれますよ。
 
ここ群馬県高崎市はだるまが有名なのですが、高崎祭りで「だるままとい」が披露されることはあまり知られていないかもしれません。これがとても格好いいんですよ。この文化をぜひ海外の方にも知ってもらいたいと思い、ゲストハウスを「まといホステル&バー」と名付けました。

店名の由来となった、高崎祭りの「だるままとい」

-なぜインバウンド向けのゲストハウスを始めたのでしょうか。

当社は、ドラッグストアやスーパーの外壁工事を中心に手掛けている建設会社です。新型コロナウイルスの影響によって環境が一変し、大きな打撃を受けたことで、「今までとは違ったことをやらなければ生き残れない」と強く感じました。そこで、新たに住宅などのリノベーションを手掛ける「ワイズリフォーム」という事業を始めました。
 
私はその3年ほど前に当社に入ったのですが、それまでニュージーランドに留学したり、空港やバスターミナルで英語を使った仕事をしていたこともあり、元々インバウンドに携わることへの関心が高かったんです。
 
当社のある高崎市の旧群馬町という地域は、都心からのアクセスが良く、山や温泉も近くて、外国人がハイキングやサイクリングを楽しむには絶好の場所です。観光のニーズは十分にあると感じていました。また、「観光分野は日本でまだまだ伸びる」という思いもありました。
 
そこで、リフォーム事業に続く新しい取組として、リフォーム事業で培ったデザイン力を生かして「インバウンド向けのゲストハウス」をつくり、観光分野に思い切ってチャレンジすることを決めました。

大きなだるまが見守る、明るく居心地の良いバーの空間。

誰もやらないからこそチャンスがある

-建設から観光という新しい分野への挑戦となったのですね。苦労もあったのではないしょうか?

はい。初めはとにかく色々な人から「外国人が全然いない地域なのに、うまくいくはずがない」と言われました。「海が無いのにわざわざ来ないよ」とか(笑)。
 
でも、私としてはニーズがあると確信していましたし、この地域にインバウンドをターゲットにした競合が全くなかったため、最初に取り組むことで、今後のマーケティングやプロモーションを優位に展開できる、と考えていました。

インバウンド事業への思いを語る吉田取締役。

まずは、地元の方々自身にこの地域の魅力に気づいてもらうことが重要だと思い、地域の飲食店を紹介するフリーペーパーを始めました。フリーペーパーを見た方から「この地域にこんなに素敵なお店があったんだ!」と言われると嬉しかったですね。掲載したご縁をきっかけに、ゲストハウスの食材を提供していただくことになったお店もあります。
 
また、「事業再構築補助金」に採択されたことが、実現に向けた大きな後押しになりました。
応募〆切の2週間前にこの補助金を知ったため、申請準備は本当に大変でしたが(笑)、地元の商工会のサポートを受けながら必死に準備をして、なんとか間に合わせることができました。

左/地域の情報を発信するフリーペーパー。右/メニュー表でも地元のお店&食材を紹介。

「この場所がツアーのハイライトだ」

-オープンから間もないとのことですが、多くのお客様が利用されていますね。どういった方々が多いのでしょうか?

外国人と日本人のお客様がそれぞれ半々くらいです。外国からは、ヨーロッパ、アジア、アメリカ、オセアニアなど様々な地域の方がお越しになっています。皆さんコミュニケーションを楽しんでくれていますね。
 
「日本語は話せないけど日本人と話してみたい」というインバウンドの方はとても多いんです。また、地元の日本人もリピーターになってくれていますよ。ここには通訳できる外国人スタッフが常駐しているので、外国語が話せなくても問題ありません。先日は、色々な国の方がカナダの料理を食べて感想を伝え合っていました。特別なおもてなしはなくても、そうした交流が非常に喜ばれています。
 
10日間ほど国内各地を旅行し、最後にここを訪れたインバウンドの方から「この場所がツアーのハイライトだ」「また絶対に来るよ」と言われ、とても嬉しかったですね。

ホステルには広いキッチンがあり、宿泊者どうしがお互いの国の料理を一緒に作る姿も。

地域に人を呼び込んでいきたい

-今後はどのようなことに取り組んでいくのでしょうか。

近いうちに群馬県内を巡るツアーを当社で商品化する予定です。例えば、現在も店内には多言語対応の観光パンフレットを置いていますが、インバウンドの方から「周辺の観光施設を知りたい、案内して欲しい」という要望がとても多いんですよ。
 
地元の活性化のためにも、観光を盛り上げることでどんどん地域に人を呼び込んで行きたいですね。
 
また、少し先の話かもしれませんが、この地域でインバウンド事業を確立したら、いずれは海外にも出店したいです。国内・海外から様々な情報や人が集まり、交流を促進する「プラットフォーム」としての役割を大きくしていきたいと思っています。

バーの一角に、県内各地から集めた多言語対応の観光パンフレットを置いている。

【会社概要】
 株式会社ワイズテクノ
代表取締役 林 雄輔(はやし ゆうすけ)
取締役 吉田 恭子(よしだ きょうこ)
群馬県高崎市棟高町503-2

(まといホステル&バー)
 群馬県高崎市北原町823番地1

-編集後記-
ゲストハウスのオープンに先立ち、日本語の話せる外国人スタッフを募集したところ、面接しきれない程多くの応募があったそうです。「この地域に外国人が来るはずがない」という「常識」に捉われず、地域に新しい風を呼び込んでいる吉田取締役。穏やかな語り口からにじみ出る地域活性化への思いと、タフな行動力がとても印象的でした。今後の更なる展開に注目です。
                                                                                                担当特派員 MH