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~IT×経営×地域のキーパーソン~

こんにちは。関東経済産業局 地域振興課です。
地域への熱い思いを持って奮闘するキーパーソンに、その情熱のルーツや取組などを伺う「地域HOTパーソン」
 
今回の地域HOTパーソンは、地域におけるDX推進の担い手であるNPO法人ITコーディネータ茨城の大久保理事長です。地域に密着し、活動する支援人材は、専門的な知識や技術はもちろんのこと、地域をよりよくしたい、地域に貢献したいという熱い思いと何よりも経営者をはじめとした地域企業の関係者に信頼される人柄、この3つが揃わないと成功しません。大久保さんはこの3つを合わせ持つ、貴重な地域のキーパーソンです。


ITコーディネータとは

ITコーディネータは、ITと企業経営両方の知識を活用し、経営戦略策定支援やIT化支援を行う専門家です。経営者の立場に立って、真に経営に役立つITサービス利活用の推進・支援を行い、IT経営を実現するプロフェッショナルであり、DX時代において、その役割はますます重要になっています。

中小企業、ITコーディネータとの出会い

大久保さんは、大手企業のシステム会社に新卒で入社。1988年に全面開通した瀬戸大橋のシステム管理や大手鉄道会社の車両管理システムの管理・運営など、大小様々なシステム構築を経験しました。
契機になったのは、2001年に参画した中小企業のマッチングシステムの構築。これまで大手企業の関連プロジェクトに参画していた大久保さんは、この時に初めて中小企業と仕事をし、その支援に興味を持ちました。
支援機関職員の勧めもあって「ITコーディネータ」の資格取得に挑戦。システムエンジニアとコンサルタントの違いに戸惑いながらも諦めず、3回目の受験で合格しました。合格を機に、「ITコーディネータ茨城」に入会し、企業向けのセミナーやコンサルティングなど、中小企業支援に携わるようになりました。
大久保さんは、支援先の中小企業が実践している人材育成を自身が勤める大企業に取り入れたり、逆に自社が実践している効率的な取り組みを中小企業に提案したりもしました。支援先の企業で一生懸命に働く人々の姿に心打たれ、「人と人とがつながる楽しさを改めて実感した」と大久保さんは言います。

当局で地域支援について語る大久保さん

祖父に触発され独立へ

2014年、大久保さんが所属している会社の規模が大きくなり、これまで実践していた自社の人材育成や地域の中小企業支援が難しくなりました。
これを機に独立が頭をよぎりますが、それを後押ししたのは、母から聞いた祖父の話だったとのこと。警察官である大久保さんの祖父は54歳で退職、その後、自動車整備会社を立ち上げ、自社の経営はもとより地域の世話役として84歳まで勤め上げました。その話を聞いた当時、大久保さんは50歳。「84歳まで働くと想定すると、まだ折り返し地点にも立っていない。自分もまだまだできることはあるのではないか。独立して地域のために何かしなければ」と決意。2016年に個人事業主として独立しました。

地域の人々の後押しを受けて

起業当初、自分に何ができるんだろうと不安な気持ちに押しつぶされそうになることも。そんなときは、地元の仲間の後押しが非常に心強かったとのことです。地元の経営者や支援機関担当者や新聞記者など、錚々たるメンバーが独立してすぐに壮行会を開催してくれたことで、「地域活性化のために頑張るしかない!」と奮い立ったそうです。

企業支援の取組(企業コンサルティング、DX推進事業の企画運営)

大久保さんは茨城県内を中心に地域企業のDX推進に向け、日夜、精力的に活動しています。DXは、企業における新事業展開を通じたビジネスモデルの創出と併せ、組織やプロセス、文化などの変革をデシダルと掛け合わせて行う取組であるため、経営者をはじめ、あらゆる階層の社員が一体となり、納得感を持って進めていく必要があります。
それが故に中小企業にとって自社単独で取り組むにはハードルが高く、大久保さんのような外部人材への支援を求めるニーズは常に高くあります。大久保さんは、ある時は専門家として、ある時はファシリテーターとして、またある時は良きメンターとして、企業に寄り添い支援を行うことで、多くの茨城発DXモデルの事例を創出しています。

大久保さんは、DX推進事業の企画運営として、令和3年度に「茨城県次世代技術活用ビジネスイノベーション創出事業」を自社で受託。セミナー開催、診断、伴走支援など、合計2社の企業を支援しました。
支援の質とともに量(支援社数)も重要視するようになり、令和4年度は10社の支援をしようと決意。しかし、支援ニーズがあるのにもかかわらず、十分な予算を確保することができなかったため、当局に相談がありました。
その際、当局が紹介したのは、令和4年度「地域新成長産業創出促進事業費補助金(通称:地域DX促進支援事業)」です。地域の先進モデルを全国に展開してはどうかという当局のアドバイスもあり、ITコーディネータ協会にご協力いただき、茨城県でのノウハウを活かし、⻑野県とも連携した事業として提案・応募し、無事に採択されました。
また、こうした事業で培った支援の経験を活かし、大久保さんはIT(DX・IoT・デジタル)導⼊⼈材の育成事業も行っています。モットーは“地域の支援は地域で”。知識(=インプット)だけでなく、実践(=アウトプット)を通じて、座学に留まらない支援人材育成を長野県、新潟県、岩手県、沖縄県でも行っています。

事業者との打ち合わせ

地域のネットワーク作りにも一役買っています。令和4年度の事業で組成されたコミュニティを単年度で終わらせないため、大久保さんは、ITコーディネータ茨城として茨城県経営者協会と共同で「Ibaraki DX Community」を設立。茨城県経営者協会、常陽銀行、いばらき中小企業グローバル推進機構などがメンバーとして参画し、県内企業向けに、無料でセミナーやDX研修を行うほか、有償で伴走支援なども行う予定です。

さらに、独立系コンサルタントの勉強会「智慧(ちえ)の会」も大久保さんのもと立ち上げられました。「智慧」とは仏教の言葉で「体感をもって得ること」。コンサルタントとして、誰かから聞いたことを話すのではなく、自らが体験したことを話せるように、長野県や新潟県、茨城県の数名のコンサルタントと日々勉強を重ねています。

今後の展望(ITコーディネータ茨城の理事長として)

大久保さんが理事長を務めるITコーディネータ茨城は、設立当初から「専門家集団」として活動してきました。
しかし、最近では「地域」に資するようなITに関する企画提案をこれまで以上に求められており、「茨城県のIT事業組織」として、茨城県のDX推進事業やリスキリング協議会へ参画しています。
 
「これからも地域の声に耳を傾け、経営者の良きパートナーとして、企業の成長を全力で支援していきます」と語る大久保さん。IT技術はもちろんのこと、経営方針も理解し、経営者に寄り添うことが出来る支援者は貴重です。更に、地域への熱い思いがあり、地域の人たちからの人望も厚い人となると、なかなか見つかりません。大久保さんは、地域を視野にいれた企画・提案と、それらを実行することが出来る、まさに地域のキーパーソンです。

【プロフィール】
大久保 賢二(おおくぼ けんじ)
大手システム会社を経て、2016年、株式会社アイ・コネクトを設立し、ITコーディネータとして独立。
2019年、NPO法人ITコーディネータ茨城の理事長(4代目)に就任。
企業コンサルティング、デジタル化〜DXの事業企画運営、人材育成事業の企画運営により地域をサポート。茨城県水戸市出身。

【編集後記】
今後の展望を尋ねた際、「自分がやりたいことではなく、地域に求められることに精一杯取り組みたい」と語った大久保さん。
穏やかで控えめな口調から、地域活性化への熱い想いを感じた瞬間でした。常に地域の声に耳を傾け、経営者の心に寄り添う姿に、人々は魅了されるのだと思いました。

大久保さんと地域振興課メンバー

NPO法人ITコーディネータ茨城
https://www.itc-ibaraki.com/

地域新成長産業創出促進事業費補助金
https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/dxcommunity/dxcommunity.html

茨城・長野DX推進コミュニティhttps://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/dxcommunity/pdf/05.pdf

Ibaraki DX Community
https://www.itc-ibaraki.com/itc茨城の事業/ibaraki-dx-community事業-1/