世界中へ”OSHIBORI”を~関東も、共に未来へ #3(FSX株式会社)~
世界中からのお客様を“おしぼり”でおもてなし
―いきなりですが、「大阪・関西万博 賓客用おしぼりサプライヤー」について教えてください。
大阪・関西万博に、世界中からいらっしゃる賓客をおもてなしする際にお出しするおしぼりを提供します。
―開催期間中、万博会場には、賓客、いわゆるVIPが、お付きの人を含めて、国内外から2万人いらっしゃると聞きました。大変な人数ですが、どのようなおしぼりを提供するのでしょうか?
詳細はまだ協議中ですが、例えば、会場視察の合間にドリンクを飲みながら一息つくような場面や、迎賓館で開催される午餐会や晩餐会といったかしこまった場面、様々な場面に見合ったおしぼりを提案したいと思っています。
当社はこれまで、お客様の「こんなおしぼりが欲しい!」の声に真摯に向き合って応えることでラインナップを充実してきました。
―御社のおしぼりのラインナップを教えてください。
例えば、厚みがあり、肌にも優しく、上質な素材を使ったおしぼりは、結婚式などのお祝い事の場面で需要があります。
様々な香りのバリエーションがある「AROMA® Premium」は有名な女性芸能人がプライベートで使用していることを発信し、たびたびSNS等でバズっています。
コロナ禍では、洗って繰り返し使う貸しおしぼりの需要は減少し、使い切りおしぼりの需要が増加しました。特に、抗ウイルス・抗菌技術であるVB(Virus Block)を施した使い切りおしぼりの需要が急増しました。
米国市場向けに、和柄パッケージのおしぼりの販売も2024年9月から始めました。「繁栄」の意味がこめられている市松模様や、「良いご縁」という意味がこめられている七宝模様を用いたパッケージで日本らしさを演出しています。
―和柄パッケージは色も映えていて、海外の人にも受けそうですね!ところで、海外の人には“おしぼり”はどのように受け入れられているのでしょうか?
気候や文化が比較的近いアジアでは受け入れられやすいと感じています。なかでもベトナムは、当社でベトナム出身の社員を受け入れているので、彼らが帰国する際に、おしぼり文化も持ち帰って広めてもらいたいです。
欧米でもおしぼりは高く評価されています。現在は、先ほど話したように、米国市場、特に日本食レストランをメインに足場作りに取り組んでいます。欧州、特にフランスは、環境への配慮に厳しいため、綿を用いた使い切りおしぼりに対してどのような反応があるのか、気になっています。もっとも、綿は土に返すことができる素材なので、当社としては環境に大きな負荷があるわけではないと考えていますが、文化や法規制が異なる海外でも理解を得られるよう、今後も検討を重ねていきたいです。
―藤波社長のイチオシおしぼりは何ですか?
「HAND & BODY」です。このおしぼりは化粧品(ふきとり用化粧水)として販売しており、手だけでなく、顔や体など全身を拭くことができます。S,M,Lのサイズ展開があり、Lサイズは、見た目はコンパクトですが広げると横60cm、縦30cmほどの大きさになり、スポーツや医療の場で大活躍です!
OSHIBORIを世界の共通言語に
―様々なおしぼりのラインナップを揃えるに至ったきっかけを教えてください
当社は、今年で創業57年となります。昔は地域密着の貸しおしぼり屋さんでした。
私が入社したのは20年前、30歳の時です。このまま貸しおしぼり屋さんを続けることに不安を感じ、新しいことを始めなければと思っていたある日、何かの記事で、米国の歌手、マドンナさんが来日時に“ウォッシュレット”と“おしぼり”に感動したというエピソードを目にし、おしぼりの高付加価値化と海外展開への強い思いが芽生えました。
現在は、ただ手を拭う“手指衛生”としてのおしぼりだけではなく、アロマやデザインを通じて“癒やし”をもたらす、高付加価値なおしぼりを中心に扱っています。
―万博を通じて、発信したいこと、実現したいことはありますか?
まずは国内の皆様に、「こんなおしぼりがあるんだ」ということを知って欲しいです。日本で生活していると、飲食店に入れば必ずといってよいほど出てくるおしぼり。身近で当たり前の存在ですが、手を清潔に保つだけではなく、“癒やし”をもたらすものとして、再認識してもらえれば嬉しいです。
ちなみに、おしぼりの起源は、江戸時代、旅人が汚れや汗を拭い、疲れを癒やせるよう、旅籠(宿)で出されたことが始まりとされています。おしぼりは昔から“おもてなし”を体現するものだったのです。
―日本ではおしぼりは“あって当たり前”の存在ですが、あらためてその存在の大事さに気づくきっかけになると良いですね。
同じ志を持った同業者をどんどん巻き込んでいきたいです。当社だけではなく、おしぼり業界全体を盛り上げたいという思いがあり、当社では10年以上前からパートナー事業を行い、国内の同業者に知財ライセンス・販売ノウハウの提供や、IT技術支援を続けています。
今回の万博には、同業者である「日本ロイヤル株式会社」(大阪府堺市)にもお声掛けし、一緒に参加することにしています。会場に近い日本ロイヤル株式会社は貸しおしぼりを、当社は使い切りおしぼりを、それぞれ役割分担の上、提供する予定です。国内各地に頑張っているおしぼりの会社があることも知ってもらえれば嬉しいです。
そして、世界中におしぼり文化を広めていきたいです。昨今の海外展開の取組を通じて、海外からのおしぼりに対する高い評価に手応えを感じていたところなので、博覧会協会から「大阪・関西万博 賓客用おしぼりサプライヤー」の打診が来たときにも、自然な流れで快諾しました。
最終的には”おしぼり”が、”OSHIBORI”として世界中の人に通じる言葉になって欲しいです。
■企業概要
FSX株式会社
代表取締役社長 兼 CEO 藤波 克之(ふじなみ・かつゆき)
【参考情報】
中小企業・小規模企業者・自治体等が活用・参加可能なプログラム
関東経済産業局公式note「事業再構築補助金へのチャレンジがもたらした成長への歩み」(FSX藤波社長へのインタビュー記事)