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熱い想いで佐渡から日本を支える社長の想い~緑あふれる木造工場!?~

経営者の情熱を発信する“ProjectCHAIN”第45弾。
今回は、新潟県佐渡市で、自動車部品等の非接触熱処理に用いられる電磁誘導加熱コイルの製造を行う有限会社リンデンの林田代表取締役です。
農家の長男からものづくり企業を立ち上げ、取引先との信頼関係から仕事を獲得しつつ、取引先はもちろん、社員のこと、そして佐渡のことを常に考えている林田代表から満ち溢れる想いを伺いました。

高校で出会ったアマチュア無線。ものづくりの道へ進むきっかけと起業

―「電磁誘導」に出会ったのはいつ頃でしょうか。

農家の長男に生まれ、高校は農業高校に進学しました。高校で出会ったのがアマチュア無線部です。それまで機械などに触れることはあまりなかったのですが、その魅力にどんどんハマっていきました。コールサインと呼ばれる交信者の情報を用い、より遠くの人と交信したり、その証明としてQSLカードの交換をすることなどがとても楽しかったです。3年生になると部長に指名され、部員をまとめる経験もしましたが、人をまとめることの楽しさを学んだのもアマチュア無線がきっかけでした。また、この時の電波や電磁といった知識が現在にもつながっています。

―ものづくりの道へ進み、起業に至ったのはどのような経緯からでしょうか。

高校卒業後、ものづくりに興味を持ち、島内の光学関係の企業に就職しました。機械いじりや図面を見ながら、ものを加工する経験を積み、ものづくりの現場に10年ほど勤めました。その後、同じく島内の電子関連企業へ転職し、品質管理や営業など幅広く経験させてもらいました。
一方、営業で島外に行く機会も多く、離島ゆえの移動の不便さ等を感じることも多かったです。
起業の一番のきっかけは、一度は社長という高みを目指してみたいという想いがあり、思うことを自分でやってみようと思ったのが一番ですが、離島という逆境をはねのけて会社経営をしたい!と思うようになった営業の経験も影響しています。

お客様から従業員まで。関わる相手を大事にする経営。

―2004年に起業して、これまでの20年間は順風満帆でしたか。

いえ。最初は特に資金繰りに苦労しました。今では銀行の支店長が訪問してくれる企業にまで成長できましたが、仕事仲間3人と起業した当初は、それぞれの前職からのつながりで、それなりに仕事は受注できていたものの、銀行からの融資を受けることができず苦労しました。最終的には金融公庫から融資を受けることができたので、なんとか乗り切ることができました。
また、思わぬところでも苦労しました。元々電源や駐車場などの設備が備わっていた縫製工場の跡地を借りて起業したのですが、電力が使用できるまで2ヶ月かかると言われてしまい、しょうがなく最初の2ヶ月は自宅の納屋で溶接作業等を行っていました。
その後はリーマンショックで仕事が減った時期もありましたが、比較的回復の早かった自動車関連の仕事を受注していたこともあり、なんとか乗り切れました。

起業当初は自らも設計から営業まで全て担っていましたが、徐々に各ポジションに優秀な社員が集まってきて、今では20名ほどの従業員に支えられています。大小、様々なものを設計から加工、刻印まで全て自社で作ることができる、機械化することのできない技術を持っているのが当社の強みです。また、製品のサイズが小さく、輸送などにおいてもタイムラグなく対応が可能なことは、佐渡という離島においても日本全国に負けない強みの一つかもしれません。結果、国内に留まらず海外からも受注を受けることができています。短納期の実現や製品の修理等、かゆいところに手が届く顧客のことを想った経営をしています。それによって信頼を一つずつ勝ち取り、築き上げています。

社長の思いの詰まった庭と木造工場。とても工場とは思えない外観でした。

信頼を築いていくことは、働く従業員との関係でも大事にしています。特に、心地よく働ける環境づくりには力を入れています。例えば、工場は木の香りやぬくもりを感じられるよう、全て木造にしています。その他にも会社内に庭を造り、山から木を移植して緑を増やす取組や、電源などの配線を地中に配置して景観を良くするなど、一般的な工場のイメージではなく開放感のある職場づくりを心かげています。トキが飛んできて羽を休めるような良い環境ですよ!

―起業してからこれまで、社長を支える原動力は何ですか。

不利な状況に負けたくない。いつか見てろ!という想いです。幼少期から過疎の町で育ち、常に環境に恵まれているわけではなかった。なので、環境に左右されずに、厳しい環境であっても負けない、見返したいという想いが強いんです。あとは「1番」が好きということですかね。どんな環境にあっても、何事においても1番を目指したい。だから、難しい仕事ほど燃えるんですよ。

社長が愛して止まない社員の皆さん。社長の想いを受けて、一生懸命作業されています。

社長として考えるこれからのリンデン。これからの佐渡。

―社長として考えるこれからのリンデン、そしてやりたいことを教えてください。

繰り返しになりますが、1番を目指したい。特に「働く環境」「従業員の満足度」「利益率」の3つにおいて1番になりたいです。
また、今後、新しいものづくりも行っていきたい。今ある設備を活用して、ものづくりをしたい従業員も求めています。金属加工を楽しみながら、これまでは当社になかった感性を持つ人とも一緒にものづくりをしてみたいと思っています。
 また、オープンファクトリーも行いたいですね。新潟県では燕三条が有名ですが、佐渡でも是非行いたい。そのために来訪者用のトイレを設置するなど、いろいろと準備をしているところです。まだまだ知名度が低いので、多くの方に自社や島のものづくり産業について、もっと知ってもらいたい。

―佐渡に対する想いも教えてください。

佐渡と言うと、一次産業や観光のイメージが強いですが、実はものづくり企業の50年来の歴史があります。離島でこのように工業が発展している島は余りなく、この工業の火を燃やし続けるために、島内の工業系企業と一緒に「佐渡工業会」を立ち上げました。工業会では、高校生と一緒にものづくりをしてみたり、同業者同士で、お互いに協力し合える関係を構築しています。
働く場所が無ければ、その町は必ず衰退します。安定した雇用を作り、島の発展に貢献するという強い気持ちで日々邁進しています。

笑顔で施設内を案内してくれる林田社長。工場にも社長の想いがいっぱい詰まっています。

―最後に一言お願いします。

おかげさまで社長を長く続けていることで、最近は周りからも認められ、商工会や農業委員会などの役職にも就かせて頂く機会が多く、島内の様々な人と会う機会が増えてきています。いろいろな人と話すことが好きなので、これからも島内外関わらず、ぜひ熱い想いを持った人とお話がしたいです。ProjectCHAINで紹介された方々と座談会なども行ってみたい。出会いを楽しみにしています。

【企業情報】
有限会社リンデン
代表取締役 林田 広幸(はやしだ ひろゆき)
新潟県佐渡市吉岡1681

-編集後記-
 佐渡を思う気持ちは誰よりも強い林田社長。創業時から様々な苦難を乗り越え、ニッチながらも個性的なものづくりを実現しています。また、工業会での活動を通じて、島の製造業全体の人材育成や広報に取り組まれる姿は、思わず応援したくなる(今風に言うと「推し」(笑))ものでした。
 同社及び佐渡のものづくり産業の発展を強く強く強く祈念しております!                                                                                                派遣特派員YI&TH