カーボンハーフまであと6年!脱炭素化は競争力強化のポイント ~地域企業・自治体等におけるカーボンニュートラル推進~
今をときめくカーボンニュートラルに携わりたい
-明城さんはカーボンニュートラルの業務に興味があったと聞いていますが、どこに惹かれたのでしょうか
志望動機みたいな質問ですね(笑)。端的に、“今をときめくカーボンニュートラル”(以下、CN)に携わってみたかった、ということが理由です。個人的な話となりますが、入局当初、産業部に配属、その次は経済産業省地域経済産業グループに出向し、産業振興と地域振興に一通り携わったため、エネルギー政策にも取り組んでみたいという思いがありました。専門性を高めつつ、これまでの知見も活かしながら、幅広い分野での取組ができるのはカーボンニュートラル推進課なのではないかと思い、希望しました。
-これまでの経験は現在の業務に活かせていますか
本省では地域経済産業グループで地域振興業務に携わっていました。脱炭素エネルギーの供給が地域の立地競争力につながるなど、CNの推進には地域振興の考え方も重要となります。また、2回目の本省出向の際には、資源エネルギー庁電力・ガス事業部で電気事業の業務に携わっていたので、その時の知識はCNの業務にも活かせています。
-CNを地域企業に自分事にしてもらうために、どういった働きかけをしていますか
なぜ地域企業がCNに取り組めないのか、なぜ取り組まないのかをしっかり理解した上で、脱炭素化をしない場合のホラーストーリーも必要に応じて交えつつ、対話するように心がけています。そのため、相手が何を求めているか、何がネックとなっているのかを意見交換の中で聞き取った上で、状況に応じた取組・提案をすることを基本スタイルにしています。
また、国の資料は難しい言葉が多くてわからないと言われます。そのため、我々がやろうとしていることが簡単に伝わるよう、説明や資料の作り方を工夫するようにしています。
-CNに前向きな事業者とそうではない事業者の違いはどこにありますか
CNを単なる「コスト」として捉えているか、そうではないか、です。
思いのほか、CN推進のメリットやイメージが具体化できていないように感じます。また、設備投資をする余裕がない、どのように取り組めばよいのかわからないという事業者も多いです。そういった事業者には、まずは省エネの取組を紹介しています。エネルギー使用量が下がることによって、コストが下がり、最終的には利益につながります。
さらに、取引先などからCO2の削減要請がある事業者には、どれぐらいCO2を排出しているのか「見える化」を推進し、自社がどのような状況に置かれているのかを把握してもらうことも重要です。排出量の見える化はぜひやってもらいたいことの1つですね。
-面白いと思うことは何ですか
カーボンニュートラル推進課の業務は、再生可能エネルギー、省エネ、電力、ガス等の知識も求められます。資源エネルギー環境部が所管しているすべての知識が求められるので、日々新鮮な気持ちで取り組むことができます。
また、CNは、エネルギー分野だけではなく産業振興や地域振興とも深く関わっているため、エネルギー政策を通じ経済産業省の根幹となるミッションについても深く考えることができます。広く様々な視点を持って業務に携われる点はいいなと思っています。
-大変だなと思うことはありますか
二点あります。一つは、自分の知識が足りないこと、もう一つは地域企業への対応です。
特に後者について、大企業であれば世界的な潮流としてCNの推進が不可欠であると考え、実際に取組を進めている事業者が多いです。一方、地域企業では、一定の脱炭素無関心層がいます。そもそもCNって何?メリットあるの?だったり、本業で精一杯でCNについて考える余裕がないといった事業者が多いです。そういった方々に対して、脱炭素化に取り組んでもらうためにはどうすればよいか、我々も日々、試行錯誤している現状です。
-CN業務に邁進する中、ストレスはどのように発散していますか
土日は趣味のバンド活動とバイクにいそしんでいます。バイクはCNとは真逆の趣味ですが。
-CN推進のためには、まずは明城さんが電動スクーターに変えてみては?
それはちょっと・・・いつか考えます(笑)。いっそのこと、官用車を水素燃料電池自動車に変えてはどうでしょう。
-たしかに政府調達から水素を導入するのはアリかもしれませんね。趣味のバンド活動は脱炭素に繋げられそうですか
いつか音楽×脱炭素の取組をやってみたいなと思っています。LUNA SEAのギターのSUGIZOさんが環境問題を意識しており、燃料電池自動車に充填した水素で発電し、それをギターの電源として活用するライブを開催していました。ORANGE RANGEさんも脱炭素の取組をしていると聞いています。いつか当局に呼べないかなぁ(笑)。
脱炭素化は地域の競争力強化のポイントになる
-事業者のCN推進はもちろんのこと、地域でCN推進に取り組む必要性はどこにあるのでしょうか。
例えば、自治体では、産業振興や企業の立地促進に取り組んでいますが、クリーンエネルギーを供給できるか、地域で面的に脱炭素化に取り組めるかが今後の競争力強化のポイントの1つになりつつあります。
脱炭素を進める上で、よく鶏と卵の関係の問題に陥りますが、需要サイドとしては、クリーンエネルギーの供給がないと投資ができない、供給サイドはクリーンエネルギーの需要が見えてこないと供給できないといった課題があります。そこをうまく組み合わせるのが我々の仕事でもあります。
-地域で協調して具体的に何ができますか
例えば、脱炭素燃料である水素・アンモニアの活用を地域(面)やサプライチェーンで検討することができます。
Hard to abateと言われる、CO2の排出量が多いものの今の技術的にCO2の削減が難しいと言われている産業があります。鉄、化学、紙・パルプ、セメントなどが挙げられますが、それらの産業が基幹産業となっている地域においては、脱炭素に資する様々な技術動向も見ながら、地域での脱炭素化に向けたクリーンエネルギーの供給・利用のシナリオ等を一緒に検討・議論することで、協調することができるのです。
-自治体とは連携しているのでしょうか
もちろん、自治体とも連携し、脱炭素化に向けた取組を行っています。内陸部なのか臨海部なのかなど、当該地域の立地特性に加え、地域の産業特性も踏まえて、脱炭素化を進めることが重要です。
CN、GX(グリーン・トランスフォーメーション)の動きが加速化する中、国の動きを地域に伝え、あるいは自治体も含めた地域の本音・意見を本省に伝えるため、両者の間に立つ当局職員は、国や政策の動きを把握しつつも現場に近い視点を持つことが不可欠です。
CNを『夢』がある取組へ
-局内有志プロジェクトの「空飛ぶクルマ」にも関わっていると聞いています
課の所属を越えた有志チームを立ち上げて、勉強会や自治体への情報共有などを行ってきました。私が参加した理由は、「空飛ぶクルマに乗ってみたい」からなのですが、CNとは別の分野を勉強しても面白いかなと思い、参加しました。空飛ぶクルマの実現には『夢』があります。
-CNを「守らなければならないもの」ではなく、夢がある取組にできるとよいですよね
そういう意味では、一気に脱炭素化が進む夢のような技術ができればよいな・・・とたまに考えます。空飛ぶクルマもCN推進に資する取組です。電力がCO2フリーなエネルギーである必要がありますが、クルマの電動化、ひいては空飛ぶクルマの実現はCNに繋がります。カーボンニュートラルは、いろいろな産業とリンクしていますので、決して夢物語で終わらせたくないです。
-事業者へのメッセージをお願いします
政府は、2028年から化石燃料を輸入する事業者等への賦課金を、2033年からは発電事業者に対しても負担金を課す予定です。2030年カーボンハーフまで、あと6年。先の話と思われがちですが、意外とすぐにやってきますので、今から脱炭素に向けた取組を進めていただくことが重要です。
CNは競争領域ではなく、協調領域でもあります。事業者、自治体、支援機関など、地域の皆さんと一緒にCNを推進していきたいと思っていますので、何かお困りごとあれば関東経済産業局へご相談ください。
【当局HP】
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/ene_koho/ondanka/kanto_cn.html