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「信頼するということ」従業員が輝く職場をつくるために

経営者の情熱を発信するProject CHAIN第36弾。今回は、千葉県白井市で産業用カーボンロールの製造を手がける、サンレイ工機株式会社の津覇 浩一(つは ひろかず)代表取締役社長です。同社は液晶パネルやバッテリー用セパレーターなどフィルム状の製品を生産する際に欠かせない産業用ロールの製造会社であり、現在はピッチ系炭素繊維の物質的優位性(軽量・高剛性・低たわみ)を活かしたカーボンロールの製造をおこなっています。「カーボンロールで不可能を可能に」をキャッチフレーズに日々挑戦を続ける津覇社長から、ご自身の生い立ちや会社への想いを伺いました。

テニス一筋の学生時代。大学卒業後は現場を経験

-津覇社長の経歴を教えてください

10歳の時に、近所にテニスコートができたことをきっかけにテニスを始めました。その後、小中高大とテニスを続け、現在でもシニアの選手として55歳以上のクラスで大会にも出場しています。8年前からは指導者として白井市の男子監督も兼務しています。
大学卒業後は、沖縄出身の祖父が上京して設立した鉄道車両等を製造する会社の現場で働いていました。亡くなった祖父は非常に人間味のある人柄でしたね。あるとき、私のテニスを応援しに来た祖父は、私への応援が少ないことに気づくと周囲の観客へお願いして私を応援するよう仕向けるなど、たくさんのエピソードを持っている人でした。

父からも祖父の話をよく聞いていました。上京してから最初のうちは大変苦労をしていたようですが、従業員とりわけ職人さんたちのことは大切に思っていたようです。祖父の会社を思う気持ちやエピソードは、自分の中でもどこかかっこいいなと思っていて、私の経営観にも反映されていると思います。
その後、縁あって親類の経営するサンレイ工機に29歳の時に入社し、12年前の2012年に2代目として跡を継ぎました。

会社の敷地内にあるテニスコート。写真は社内夏祭りの様子(提供:サンレイ工機株式会社)

輝ける人を大切にしたい

-家業では現場に出ていたとのことですが、経験から活かされていることはありますか。

祖父の会社には職人気質の方が多く、かなり根性を鍛えられました。例えば、雪の中「線路に落ちているアンカーボルトを探して来い!」と言われるなど、今思えば理不尽な指示も多かったですね。アンカーボルトの例は極端ですが、同じ釜の飯を食い、難しい課題を一緒に乗り越え、他者から認められることで自分に自信を持つことができました。現場では多くのことを学びましたが、私の中で強く感じたのは、一風変わった人ほど細かいところへのこだわりも強く、丁寧な仕事をしてくれることや、情熱を持って仕事に取り組んでくれるということでした。この経験は、当社の従業員の採用でも意識しております。

サンレイ工機を継いでからは、従業員はすべて私自身が面接して採用の是非を決めています。「ちょっと変わった」というと言葉は適切でないかもしれませんが、厳しい環境で頑張ってきた方を積極的に採用するようにしています。前の仕事でメンタルを少し崩してしまった方を採用し、仕事を続けていく中で立ち直った事例もたくさんあります。彼らは自分自身が辛い時に会社が寄り添ってくれたことを絶対に忘れないので、仕事に対してとても誠実に取り組んでくれるのです。特に独創性や新規性が試される開発現場は、そういった辛い状況で応募してくれたスタッフも多く、彼らは当社にとって大きな力になっています。

実は、当社の従業員には学生時代の成績がとても優秀にもかかわらず、経済環境などの理由から高卒で社会に出ることを決断した方達が多く在籍しています。彼らは、家族や弟妹の面倒を長らく見てきた経験や複雑な家庭環境を経験してきたことから非常にしっかりしています。責任のあることを任せるとすごく伸びてくれて、一つものを教えれば、他に何も教えることがないほど優秀です。
また、我が社には25年務めてくれている障がいを抱える社員がいるのですが、彼は過去に自身の不注意から商品を傷つけてしまったことに責任を感じ、退職した経歴があります。退職の際は引き止めつつもこれまでの感謝も込めて従業員皆で見送ったのですが、その1ヶ月後、やっぱりサンレイ工機で働きたいと戻ってきてくれました。我々としても彼の頑張りはよく知っていたので、とても嬉しく思い、すぐに復帰してもらいました。

新入社員歓迎会の様子(提供:サンレイ工機株式会社)

信頼するということ

-とても素敵な話ばかりですね!従業員への愛が伝わってきます。

従業員を採用したのは私ですから、彼らは私自身なのです。だからこそ信頼して仕事を任せることができます。

私はたまに大事な会議の当日、「今日の会議には出られなくなった」と突然会社に連絡し、本当にそのまま休むようにしています。そうすると従業員は会社の重要事項を自分達のみで決めるしかない状態に陥ります。従業員の判断により、上手く事が進めば、彼らは自信がつき大きく成長することができます。私は経営にさほどこだわりはありませんので、むしろ社員を信頼してなるべく任せるようにしています。

従業員に自分を真似しなさいと言うことはないし、私の言うことを聞いてくれる方はむしろ不安になります。常に私を疑って物事を考えてほしいです。
また、従業員に対して、「期待しています」などの言葉はプレッシャーになってしまうため極力言わないようにしています。「すごい!」「さすがだね!」などの褒め言葉が大事だと思います。

-社長として、従業員との信頼関係を築く上で心がけていることなどありますか

お花見や夏祭りなど社内のイベントを大切にしています。司会や器具を提供してくれる業者さんをテレビで見つけて社内運動会の運営をお願いしたこともありました。どのイベントも非常に盛り上がっています。
また、当社には従業員が中心となって、テニスやゴルフ、サッカー、野球など様々なサークルがあるのですが、私もいろいろなところに顔を出すようにしています。特に競技性があって自分が下手なものには積極的に参加するよう意識しています。従業員に教えてもらう立場になることで、社長だからって偉くないんだぞという自戒になっています。
立場的に都内で会食・飲み会もよくあるのですが、終電があるうちは千葉の家までタクシーで帰るようなことは極力しません。これも自分が偉くないという戒めです。いくら社員の前で節約・効率を語っても自分が常にタクシーで帰っていたら伝える言葉に重みがないような気がします。こういったことの一つ一つが大事なのではないでしょうか。

社長としてのあり方を熱く語る津覇社長

次の世代を見越して

-今後どのような目標をもっていますか。

社長に就任してから12年になりますが、就任当時はリーマンショックの影響や業種転換もあり仕事がほぼなくなっていた厳しい時期でした。そこから事業の立て直しとしてカーボンロール事業にかけ、積極的な設備投資を行い全力で駆け抜けてきました。これからは今まで歩んできた道を振り返っていきたいと思っています。そうすることで、当時は見落としていた大事なことや、お世話になっていながらも恩返しができていない方々などが浮かび上がってくるはずです。これまでの自分を振り返ることで、足りなかった部分や必要なことを整理し、次の10年、次の世代の人たちへ「たすき」としてつないでいってほしいですね。
もちろん一番重要なものは、時代の変化やニーズをしっかりとキャッチすることだと思っています。サーフィンに例えると、波が無いところでいくら漕いでも波には乗れないし、基礎体力がなければ大波には乗れません。いち早く波が来ることをキャッチし、それに備えてポジションを確立するため、日々鍛錬して備えていくことが大事だと認識しています。

同社の製品(提供:サンレイ工機株式会社)

【企業概要】
 サンレイ工機株式会社
 代表取締役社長 津覇 浩一
 千葉県白井市名内342-3

-編集後記-
工場内を見学させていただいたのですが、従業員の皆さんがお仕事中にも関わらず、笑顔で挨拶をしてくださったのがとても印象的でした。津覇社長とは今回初めてお会いしましたが、明るくフレンドリーな方でした。短い時間ではありましたが、たくさんお話をして下さり、いずれも素敵なエピソードばかりで、すべてを書き切れないのが心残りです、、、
                           派遣特派員 AS

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