ロジックより情熱。「わくわく」「どきどき」想いを乗せる仕事のススメ
信託銀行員時代に培われた「俯瞰力」が経営者として必要な力に。
―誠和に入社するまでの経歴について教えてください。創業者のお祖父様やお父様が社長として働く姿を見て社長業を継ぐことは意識していましたか。
「いつかは父の会社を継ぐ」ということは物心がつく頃から周囲から言われていましたので、自身が成長する中で将来の現実的なビジョンとして、自然と意識するようになっていました。
都内の大学に進学後、いずれは父の会社を継ぐつもりでいましたが、まずは他社で経験を積もうと思い就職活動を始め、リーマンショック後の厳しい状況でしたが何とか都内の大手信託銀行に就職が決まりました。面接では自分の想いを伝えることができ、「ここで頑張ろう!」と意気込んだ当時のことを今でも覚えています。当時社長だった父の意向もあって29歳で誠和に入社しましたが、信託銀行では金融業をはじめ、不動産や組合など様々な業種の仕事に携わることができ、精一杯働いたと自信を持って言えます。今振り返れば、信託銀行で経営者として必要な知識や経験を培うことができましたね。
―信託銀行員時代、具体的にどのような力が身についたのでしょうか。
一番は物事を「俯瞰する力」です。経営者として会社全体を見なければいけませんし、顧客に対しても常にベストな提案をしなければなりません。そのためには、法律も、政府の方針や政策も、社会の動向も、会社の従来業務や目指すべき方向性も知らなければいけません。仕事において得意分野を極めることは大事ですが、会社経営では専門性よりゼネラリストとして全体を捉えることが重要です。自社の製品やサービスの良し悪しも、他社のことを知っているからわかることですよね。より多くのことを分かってこそ正しい提案やサービスができ、物事の全体を知る中で「俯瞰力」が培われると思います。信託銀行では、銀行業務の他にも不動産や組合など様々な業務にも取り組んだからこそ俯瞰力が培われ、社長になった今でも様々な業務を多面的に見ることができるようになったと思っています。
「わくわく」と「どきどき」。やりがいのある仕事は「想い」から生まれる。
―誠和に入社してからの取組を聞かせてください。
誠和に入社してから、会社を更に成長させるべく国や自治体の補助制度にも積極的に挑戦するようにしています。ある時は農林水産省の補助金に申請し、不採択になったこともありましたが、私は転んでもタダでは起きない性格なので、そこから申請できそうな補助制度を調べ、申請可能な3つの事業全てにチャレンジしました。申請締切まで残り15日というタイミングでしたが、休日返上で事業計画書を書き上げたことを今でも覚えております。その結果、2事業に採択され、2勝2敗となりましたが、挑戦してやりたいことを実現できるようになったので、私自身としては「勝利」です。
私は失敗ばかりしていますが、挑戦するから失敗するのであって、失敗そのものは悪ではないと思っています。挑戦するからこそ、得られるものは想像を超えるほど大きく、挑戦のないところには成長なしと考えています。
―まさに「現状維持は後退」と言わんばかり。チャレンジングな姿勢を大出社長から感じます。
私は日本の農業を変革し、農業という産業を盛り上げ、経済を活性化させたいという想いがあり、その想いの実現のために仕事をしています。私自身「わくわく(意欲)」「どきどき(不安)」を大切にして仕事することを心掛けています。仕事は「わくわく」と「どきどき」の繰り返しで、「わくわく」が起点となり、やりがいのある仕事に繋がると思っています。
「現状維持は後退」というのは「挑戦しなければ後退する」という意味だと思いますが、実はそれとも少し異なると思っています。後退しないための挑戦、言わば「わくわく」が起点でない仕事は、突き進めても「どきどき」した不安が積み重なるだけでやがて押しつぶされてしまうでしょう。一方で、「これをやってみたい!」という「わくわく」が起点となる仕事は途中で壁にぶちあたっても、やりたいことを成し遂げたいという想いが起点にあるので困難も乗り越えられますし、乗り越えた先の成功体験が更なる「わくわく」を生んでくれると実感しています。
ロジックよりも「情熱」を重視すべし。想いの言語化で社員の挑戦を後押し。
―社員の目標達成シートにチャレンジ項目を設けていると伺いました。会社として社員の挑戦を後押しされているのですね!
そうですね、社員の「これをやりたい」という情熱を大切にしています。社員から提案される企画も、内容よりもまず「あなたの想いは何か?」を問うようにしています。社員の感情や気持ちの変化を言語化することも経営者の仕事であり、言語化された想いをベースに社員が行動することで、今まで見えていなかった行動目標がクリアになり、様々な経験や知識がそこに繋がります。だからこそ社員の「想い」を大事にしていきたいです。
PDCAサイクルで考えると、P(Plan)・D(Do)の段階は特に情熱で進めても良いと思っています。むしろ計画の段階からロジックを固めたマーケティングは、正解ありきで「わくわく」する仕事に繋がらない。最初はやりたいことに対する情熱が一番重要で、成功するためのロジックは最低限で良いのです。
家族や親戚、顧客から「すごい!」と言ってもらえるような会社づくりを目指す。
―誠和を今後どのような会社にしていきたいですか。
社員一人ひとりが「家族・親戚に自慢できる会社」にしていきたいです。そのために私自身も経営者として有名になろうとしています。うちの社員はみんな優秀ですから、私が有名になれば社員を自慢できます。将来、当社とお付き合いくださるお客様が「あの誠和さんと取引しているんですね」と言われるような会社になることが目標です。
今回のインタビューもそうですが、私が経営者として前面に立って想いを発信していきたいです。
【企業情報】
株式会社誠和
代表取締役 大出 浩睦(おおで ひろのぶ)
栃木県下野市柴262-10