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「一期一会」 の精神を大切に ~ダンボールに込める想い~

経営者の情熱を発信する”ProjectCHAIN”第51弾。今回は埼玉県三芳町のダンボールメーカー、株式会社 有村紙工 代表取締役 有村 誠さんです。家族経営の小さな工場から出発した同社は、近年需要が伸び悩むダンボール業界においても、毎年、売上増の目標を達成し続けることで、創立55周年を迎え、今では、従業員50名を超える会社に成長を遂げました。今回は、有村社長が大好きなテニスを通じて習得された、目標を達成し、成長し続けるための秘訣に迫りました。

三芳町の花火大会の有料席で使われているダンボール椅子。
「簡単に設置・片付けが出来るイスが欲しい」との声に応えて開発したもの。

「目標」を立てることの大切さ

-有村社長の幼少時代について教えてください。

中学1年生の時に三芳町に引っ越し、以来、ダンボール加工をメインとする家業を手伝う傍ら、テニスに没頭する日々を送っていました。もっとテニスが上手になりたいという一心から、常に目標を意識した生活を心がけたことは、今の自分の土台となっています。
その後、22歳で大学を卒業し、2年間大手メーカーへ修行に出た後、25歳の時に当社に入社しました。

工場外観

-入社後、どのように仕事に取り組まれたのでしょうか。

テニスの経験から、何事も目標を立てることが大切と考えていたので、仕事においても、売上について具体的な数値目標を設定し、その達成のために、どのような行動をとるべきか考えました。
例えば、当時、配達は社員自ら行っていましたが、それよりも新規営業をする方が目標達成の近道と考えました。当時の社長であった父とは、意見が対立し、なかなか受け入れてもらえませんでしたが、このままでは当社は現状維持どころから衰退してしまうと思い、自ら探してきた運送会社に配達を託し、空いた時間を新規営業に充てることにしました。
また、設備投資も積極的に行い、受注に対するキャパシティを拡大していきました。
すると、みるみるうちに売上が増加し、最終的には父にも認められ、事業を承継することになりました。

今でも設備投資は積極的に行う

秘訣は「1」の積み重ね

-目標を達成する秘訣は何でしょうか。

常に「1」を大事にしています。お客様最優先で「1」を積み重ねることが、いずれ大きな成果になると社員にも伝えてきました。段ボール1枚にこだわり(段ボール1枚でも困っているお客様がいれば対応する。)、1円にこだわり(1,000円のお客様も100万円のお客様も区別しない。)、1人にこだわる(1人のお客様や1人の取引先を大事にする。1人を大事にすることでいずれ大きな花が開く。)。そのためには、社内では「“できない・無理”は禁止。お客様の要望はいくらお金を使ってもよいのでしっかりと対応する」ということを伝え、お客様からの仕事を断らないようにしています。
このことは、若い頃、町のテニス教室のコーチを務めた経験が大きく影響しています。画一的な指導ではなく、老若男女、生徒一人一人に寄り添い、年代やレベル感に合わせた指導を心がけたように、今も、お客様一人一人のご要望を大切にしています。

お客様最優先を表すフラッグを工場内に掲げている

また、お客様だけでなく、社員の意見や提案に対しても、基本NOとは言いません。もしハードルが高い取組があれば一緒に解決策を考えるなど、ボトムアップ型の経営を心がけています。
社員にNOを出してしまうと、社員が萎縮し、成長機会を逃すだけでなく、お客様からの受注にも対応できなくなるという負の連鎖が生じてしまうからです。
社員発のアイディアで失敗してもペナルティなどはないので、考えたことはどんどんぶつけてきて欲しいと思っています。
お取引先一社一社との出会い社員一人一人との対話をとても大切にしています。

社員一人一人の工夫を大事にすることで、お客様の多様なオーダーに応えている

-お客様だけでなく、社員の「1」も大切にされているのですね。他にも心がけていることはありますか?

はい。一人一人の働き方も尊重するために、社内ルールを作りすぎないようにしています。もちろん、ある程度の社内ルールは必要ですが、ルールを逆手に揚げ足を取られることで、社内の人間関係がぎくしゃくしてしまうこともあるので、そうしています。
また、価値観も違う一人一人の社員が幸せな人生を送ってもらうために、「会社を良いように使ってくれ」といつも言っています。
これは小さいことかもしれませんが、例えば子供の登校のお手伝い当番があって、出社が少し遅れるなら社内で柔軟に対応すればいいし、子供の送り迎えのため勤務時間が少し前後する際は気にせず言ってもらうようにしています。金銭面で悩んでいる社員がいたら、社長に直接相談してくれればいい。些細なことでも直接社長に言えるのが有村紙工であり、中小企業の良さだと思っています。

「社員にはなんでも相談してほしい」と語る有村社長

-社長個人として、今後、続けていきたいことは何ですか?

昨年還暦を迎え、年に1回は妻と海外へ旅行することにしました。今年は台湾・韓国・マレーシア、来年はアンコールワットやドイツに行こうと計画中です。
海外に行くことによって自分を見つめ直すことができ、また、会社を客観視することができます。社内で留まっていると周りが見えず、外とのギャップが必ず出てくるので、良い意味で刺激を受け、勉強になっています。
また、60歳になってからランニングと筋力トレーニングを始めました。今までもテニスとゴルフは続けていましたが、新しいことを始めて、自分自身に手をかけるようにしています。あとは、毎年のことにはなりますが、元旦に子供や孫、弟の家族含めて24人が全員集まって初詣に行き、そのまま会社に寄って全員で神棚に手を合わせるという行事は今後も続けていきたいです。

-仕事でもプライベートでも、具体的な目標を立て、取組を続けることを大事にする姿勢に感銘を受けました。本日はありがとうございました!

ダンボールの断面を模したアート。
ダンボールをユニークな視点から捉えた表現に刺激を受け、会社玄関に飾っている。

【企業概要】
株式会社 有村紙工
代表取締役 有村 誠
埼玉県入間郡三芳町上富844-2

編集後記
有村社長とは数年来の関わりがありましたが、有村社長のこだわりや人生観などについてここまでお聞きできたのは初めてでした。今回の記事では「一期一会の精神」≓「1」を積み重ねることの大切さと私なりに解釈して書かせていただきました。「人」を大事にすること、家族や従業員を大事にする素敵な社長さんだなと改めて感じました。これからも有村社長のお人柄とパワフルさで三芳町をもっと元気にしていってほしいです!応援しています!
                                                                                                派遣特派員 IY

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