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秩父に根ざした業界のリーディングカンパニーへ~プレイヤーと経営者の違いを深く痛感。社長が語る想いとは~

経営者の情熱を発信する“ProjectCHAIN”第53弾。今回は埼玉県秩父市にある株式会社新井精密代表取締役 新井 利幸(あらい としゆき)さんです。
埼玉県秩父市に本社を置き、主に精密部品加工を行っている当社は、幅広い分野(自動車分野、医療分野、コネクター分野、空圧分野等)に対応し、多種少量生産体制を構築しながら、業容の拡大に努めています。また、IoTを活用しながら精密複合加工製品に対しても高能率かつ高精度な高い加工技術力を持ち、品質要求レベルや加工難易度の高い製品加工を行っています。
今回は、秩父という地域や一緒に働く社員へのリスペクトを忘れずに、対話を大切にしながら日々奮闘する新井社長に熱いお話をお伺いしました。

社員が自由に使用できるカフェスペース
( 株式会社新井精密の公式ホームページより写真を引用)

自分が活躍できる場所

―家業に携わったきっかけを教えてください。

当社は1978年1月に私の父(現会長)が脱サラして起業しました。
当時、父は繊維業の会社に勤務していましたが、サラリーマンでは今後見通しがつかないと思ったらしく、それなら自分で起業しようと決心し、夫婦2人で自宅の一角で金属のバリ取り作業などの内職仕事から事業を始めたようです。
勢いよくスタートしたものの、当初は、金属の加工に関する経験や技術が乏しく、とても苦労したと聞いています。

先代夫婦が2人で始めた新井精密は、今では社員約100人を抱えるように
( 株式会社新井精密の公式ホームページより写真を引用)

私は、1978年3月に生まれました。
幼い頃から、自宅には常に近所の方がいらして両親の仕事を手伝っている様子を見てきました。
中学生になると、私が仕事に駆り出されることも多くなりました。
同級生のみんなは遊んでいるのに、自分はなんで家の仕事を手伝わなければならないのだろう、
正直、早く家を出ていきたい、家業は継ぎたくないと思うようになりました。

そこで、家や家業から逃れるように、一生懸命勉学に励みました。
しかし、いざ大学に通ってみると、まわりの友達は優秀な人ばかり。もしこのまま都内の会社に勤務したら、自分が活躍できる場所があるのだろうか、とモヤモヤする気持ちが芽生えました。
そんな時、帰省して久しぶりに家業の手伝いをしてみると、幼少期と違って、ものづくりに対するおもしろさ奥深さを感じるようになっていました。
幼い頃と比べて、自分の中で感じるところが何か変わったんでしょうね。

積極的な設備投資を行いIT化や従業員の多能工化を進めている

自分が活躍できる場所はここなのかも、こういう生き方も良いのかな、と思ったのを今でも覚えています。
それ以降、家業に関わることが楽しくなり、進んで手伝うようになりました。

プレイヤーと経営者の違い

―若くして代表取締役に就任されています。就任当時のことを教えてください。

私は35歳の時(先代である父が65歳の時)に代表取締役に就任しました。
大学卒業後、入社してしばらくすると、父から「自分が65歳になったら会社を渡すから」と言われていました。父は、「IT化が進む中、めまぐるしく変化する経営環境の流れについていく為にも早い段階で世代交代をして、波に埋もれない企業を作ってほしい」という想いがあったようです。
入社後、ものづくりの製造現場からスタートし、生産管理・品質管理・営業を含めたすべての業務に携わり、経営者としての意識を持ちながら仕事をしていました。

代表取締役に就任し、いざ経営に携わってみると、プレイヤーと経営者の違いを痛感しました。今までプレイヤーとして培った工程上のコツ(現場感)はわかっていたつもりでしたが、経営者としてのマネジメントが思うようにできなかったですね。
また、先代が今まで培ってきた考えと、それを大事にしつつも新しいことも取り入れたい私の考えがよくぶつかりました。家に帰っても口を聞かないなんてことも多々ありましたよ(笑)

当時を思い出しながら話をする新井社長

その時、このままではいけないと思いました。マネジメントを学び直すために、1年間マネジメントスクールに通いました。若手経営者が集まり、経営戦略や財務の意味、マーケティング、組織論などを学び、最終的には自分自身で事業計画を作成する研修を通じて、経営者としてのイロハを学びました。
特に、客観的な視点を持ち、自社の現状をしっかり把握し、あるべき姿をしっかり理解することは今でも大事にしています。

業界と地域、両方のリーディングカンパニーとして

―新井社長が大事にしていることや今後に向けた想いを教えてください。

私が大事にしているのは、社員みんなと対話をすることです。

社内はフリーアドレスを採用し、誰とでも話しやすい環境作りを心がけている。

ありがたいことに、当社には、約100人の地元社員が働きに来てくれています。
当社がここまで成長できたのは、社員と対話を続けたことで、「会社が思う方向性(こういう風に企業を成長していきたい)」と「社員一人一人の想い」の両方を大切にしながら、ベクトルを合わせることで、会社全体の生産性を上げつつ、社員と会社の双方が成長できる場を作ってきたからだと思っています。
今でも必ず年2回はすべての社員と1ON1のミーティングを行い、お互いの想いを伝えています。
今後は、社員のみならず、私や社員が住む秩父という地域も良くなっていくような環境づくりをしていければ、と思っています。

経営者だから、社員だから、と壁を作るのではなく、それぞれの想いを自分の言葉で伝えていくことで会社は成長していくと考えています。

先代がかつて予見したとおり、世の中はめまぐるしく変化し、競争が激しくなっています。
そのような状況下でも、お客様からご指名してもらえるよう、「株式会社新井精密」にしかできない、高い付加価値を追求し続けたいと思っています。
その一環として、顧客ニーズに迅速かつ柔軟に対応すべく、積極的なIT化設備投資を行っています。同時に、人が活躍する場面もあり続けると考え、従業員の多能工化も推進しています。

新井精密でしかできない製品の数々

2023年度には、「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選ばれました。今後も信頼と技術力で、「精密切削業界のリーディングカンパニー」とともに、秩父地域に根ざした魅力ある企業として地域活性化に貢献できる「地域のリーディングカンパニー」も目指していきます。

【企業概要】
株式会社新井精密
代表取締役 新井 利幸(あらい としゆき)
埼玉県秩父市小柱670

【編集後記】
今や秩父地域では知らない人がいない新井精密の新井社長にインタビューさせて頂き、現状をしっかり把握し、今後のあるべき姿を常に想像しながら経営をされている姿にとても刺激を受けました。また、ご自身の経験を基に社員と対話することで、みんなが同じベクトルを向いて仕事に励んでいる印象を受け、改めて対話の重要性を認識することができました。
社員とともに会社・地域・精密切削業界を成長させていく「株式会社新井精密」を今後も応援していきます!
                                                                                                 担当特派員 KW

【参考情報】
株式会社新井精密は、2023年度はばたく中小企業・小規模事業者300社」(はばたく300社)に選定されています。

2023年度はばたく中小企業・小規模事業者300社を受賞

はばたく300社は、経済社会構造の変化に対応して事業変革や新規事業に挑戦し、地域経済や日本経済の成長への貢献が期待できるモデルとなる中小企業を表彰する制度です。
同社事例を含む、2023年度はばたく300社各社の取組事例は、事例ナビからご覧いただけます。
選定企業各社の取組から得られるヒントも多々有るかと思いますので、是非、ご覧ください。

事例ナビでは、優れた企業の様々な事例がご覧いただけます。

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