「アナログ×デジタル」で公共利益を追求! ―ものづくり父子鷹の挑戦
顧客や社会の利益のために、いきいきと働く
―まずは会社設立の経緯を教えてください。
◇秀幸さん:旋盤職人の父が営む小さな工場から35歳の時に独立開業し、ガス管やプラントの点検・工事に使われる特殊な機械や装置等を開発・製造してきました。
それほど目立つ存在ではなかった当社がブレイクスルーしたのは、2015年、当社で開発した遠隔操作点検ロボット「のぼるくん」が、かながわ信用金庫さんの勧めでエントリーした「かながわビジネスオーディション」で県知事賞を受賞したことがきっかけです。以来、神奈川県庁や発明協会、綾瀬市役所、地元の各種団体、中小企業診断士、デザイン事務所、ITベンダー等々、当社を応援してくれる方々との繋がりが生まれました。 「顧客の利益が自社の利益。すなわち公共利益」をモットーに、皆様の恩義を10倍返ししようとの想いで日々仕事をしています。
―優馬さんは、子どもの頃から入社するつもりだったのですか?
◆優馬さん:いえ、実はあまり家業に興味はありませんでした。子どもの頃は工場には年一回行く程度で、何の仕事をしているかもよくわかっていませんでした。大学生になりアルバイトとして手伝いましたが、卒業後は別の会社で働くつもりでした。
でも、いざ就職活動で色々な会社を回ってみると、案外皆さん暗い顔で仕事をしているなぁ…と思ってしまったんです(苦笑)。そこで思い出したのが、アルバイト中に見たいきいきと働く当社の社員、そしてヒデさんの姿でした。
―秀幸さんは、優馬さんにいつか入社して欲しいと思っていたのですか?
◇秀幸さん:ユウマが入社するとは考えてもいませんでした。私自身も親とは別の会社を立ち上げましたし、ユウマは自由人な面があるので(笑)。
ところがある日、ユウマから「ヒデさん、仕事は楽しい?」と聞かれたんです。
「日々命がけだし、大変だよ」と答えると、「いや、ヒデさんやサーフのみんなはいきいきと仕事をしているように見えるよ。」と真剣な目で言われたんです。
「なら、やってみるか?」「うん。」そんな感じで、ユウマの入社に至りました。
“文系平社員”が、社内情報管理のDXを実現!
―優馬さんの新入社員時代を教えてください。
◆優馬さん:大学では外国語を専攻しており、製造業の知識はほぼゼロだったので、とにかく勉強の日々でした。入社一年目は、昼間は職業訓練校でCADを学び、夜は事務仕事をこなしていました。二年目からは、さがみはら産業創造センターの若手塾に通ったり、年150冊ペースで本を読み漁ったり…
◇秀幸さん:いつの間にか、当社に来て頂いているデザインの先生に弟子入りしていたなんてことも!ユウマには、良い意味で学生の気持ちそのままに向学心を持ち続けて欲しいと思っています。
−優馬さんにとって印象深い仕事を教えてください。
◆優馬さん:会社に慣れてきた頃、ヒデさんから「“アナログとデジタルの融合”について考えてくれ」という課題を与えられました。漠然とした難しいテーマでしたので、まずは日々の業務を振り返りながら考えてみることにしました。
当時、社内情報は紙ベースで、しかも整理が不十分なため、過去の見積書等がすぐに見つからず、時には現場の職人さえ手を止めて社員総出で捜し物をすることもありました。これでは、お客様をお待たせしてご迷惑をかけてしまいます。そこで、社内情報管理のデジタル化に取り組むことを決めました。
まずは、捜し物が起きる原因は何か、“出来ない”“仕方無い”に根拠はあるのか、自分なりに調べたり、中小企業診断士の先生に聞いたりして突き止め、マインドマップを用いて整理、分析して、デジタル化の構想を練り上げました。
デジタル化の手段として、当初はExcelや市販のパッケージソフトも試したのですが、しっくりこず、思い切ってアプリを開発することにしました。私にはIT知識が無かったのですが、ローコード・ノーコードを活用すれば何とかなるだろうと考え、これまで関わりがあったITベンダーと一緒にトライ&エラーを重ねて、遂に当社オリジナルの情報一元管理アプリを作り上げました。
ユーザーでもある私自身が主体的に開発に関わったので、どんな優秀なプログラマーが独自で作るよりも、使い易いアプリが迅速に作れたと自負しています。
―秀幸さんは、優馬さんの仕事ぶりについてどう思われますか?
◇秀幸さん:当社の価値の源泉は、アナログな加工技術にこそあると思っています。
ユウマが社内情報管理をデジタル化してくれたことで、職人はものづくりに専念できるようになり、お客様に確かな品質をスピーディーに提供できるようになりました。
ユウマは子どもの頃から根拠の無い話がとにかく嫌いで、常識とされてきたようなことでも、疑問に思えばとにかく突き詰めて調べ、考え、根拠や原因を探し出すんです。彼ら若い世代は、探求型教育を受けてきたからか、バイアスなく物事を捉えて課題解決する能力が高いように思います。
製造業のあらゆる悩みを解決し、リスペクトされる企業を目指す!
―キャラクターは違えど、お二人の根底には同じ想いが流れているように思います。10年後、どのような未来を描いていますか?
◆優馬さん:あらゆる製造業の悩みを、ハード・ソフトの両面から解決できる、そんな競合ゼロの会社を目指したいと思います。お客様が欲しい“もの”も“サービス”も作る。ものづくりを熟知しているからこそ、製造現場に本当に役立つサービス開発が可能になると思っています。
すでに今も、自身のアプリ開発の経験や成果をお客様や地域の仲間に提供しています。誰かの悩みや課題を解決するのがとにかく楽しいんです。自分のためではなく、誰かのために働くからこそ、力が湧くし、知恵も出ることを日々実感しています。
◇秀幸さん:京都の料亭のようなお客様からリスペクトされる会社を目指したいと思います。ものづくりは人づくり。職人は年を重ねてもずっと腕を磨き続けられる、魅力ある仕事だと思います。尊敬を集めるような域まで技術を高めていって欲しいです。
ユウマには、お客様や社会に貢献できることをとにかく自由にやってほしいと思っています。度々“ロマン会議”を開き、未来について語り合うことで、経営状況や経営理念も既に共有できています。
当社は逆三角形型組織で、社長は一番下の存在なんです(笑)。私はユウマたち社員の活躍を支えていきたいと思います。
当記事の続編です。併せてご覧ください!
Project CHAIN 番外編#2 潜入調査であの記事を深堀り!「いきいきと働く」って実際どういうこと?
https://kanto-meti-gov.note.jp/n/n558ef751bf4e
【企業情報】
株式会社サーフ・エンジニアリング
代表取締役 根本 秀幸(ねもと ひでゆき)
神奈川県綾瀬市吉岡東3-10-3
【参考情報】
「白書って難しそう・・・」なんて思っていませんか?実は具体事例を取り上げたコラムも豊富で、意外と面白くてためになるんです。同社の取組は、「2023年版ものづくり白書」のP166~167、「2023年版中小企業白書」のP287、「2023年版小規模企業白書」のP119に掲載されています。ぜひご覧ください!
2023年版ものづくり白書
2023年版中小企業白書
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