Project CHAIN番外編#3 潜入調査であの記事を深掘り!「1つのオレンジを皆で分け合う」って結局どういうこと?
前回も取材にご協力いただいた橋本社長に、単刀直入に聞いてみました。
―「明るく楽しく対等に」働くことができる会社のしかけには、例えばどんなことがありますか?
橋本社長:例えば「自律会議」という当社独自の会議ルールがあります。・・・言葉で説明するよりも、実際に参加した方が分かりますよ。ちょうどこれから経営会議を行いますので、是非体験してみてください。
な、なんと、吉村の経営方針を決める経営会議に飛び込み参加することになりました!
経営会議は、幹部のみならず、ベテランから若手社員まで参加し、次のように進められます。
○全員が必ず発言する
○発言のパスは2回まで
○一人あたりの持ち時間は
・議題に対するアイデア出しの時間3分
・アイデアの良いところ3分
・アイデアの悪いところ3分
・悪いところに対する改善点3分
・班の意見をまとめる時間3分
○誰もが時間厳守!
実際に参加してみると・・・これがとっても難しい。
発言順はすぐに回ってきます。強制的に考えをひねり出して発言することになるので、的を射た回答かどうかを気にする時間もありません。普段経験したことのないスピード感の会議になんとか付いていくので精一杯でした。それでも、不思議なことに、最終的には議題に対して、皆が納得する答えがまとめあがるのです!これはすごい会議方法だと思いました。
―貴重な機会をありがとうございました。即座に発言が求められるため、私たちだけでなく、意外と社員の皆さんもアワアワしながらお話しされているように思いました(笑)。でも、その分、発言すること自体のハードルは低いと感じました。
橋本社長:このような会議形式を採り入れたのは、社員が対等に話し合える環境を作りたいと思ったのがきっかけです。意見が対立するようなディベートは、負けた側は嫌な気持ちになりますし、納得がいかない立場の人が必ず出ます。また、権力がある人が話し始めてしまうと、自分の意見があっても、その人の意見に従わざるを得ない場面が出てきます。
だから、「どうしてこうしたいのか」というニーズをお互いに伝え合うことを大事にしました。時間管理も徹底的に行い誰かが演説をするのを防ぎます。
また、若手社員も参加することで、会社に対する当事者意識を持てるようになります。当事者意識は、持てといわれて持てるものではありません。自分が当事者になったときに芽生えるものです。巻き込まれることで、どう振る舞うべきかを学び、それが全体の成長につながっていくのだと思っています。
橋本社長が、社員の考えを尊重し、全員を巻き込むことを大切にされていることが良くわかりました。でも、社員の皆さんは、ほんとのところ、どう思っているのでしょうか。
続いて、クリエイティブデザイン部課長補佐の弓場さん、本社営業部新人の赤星さん、企画推進部課長の大根さん、本社営業部課長の高橋さんの4名からお話を伺いました。
―さきほど経営会議に飛び込み参加したのですが、めちゃめちゃ難しかったです。皆さんは初めてあの会議に参加された時の印象はいかがでしたか?
弓場さん:「難しい!」というのが第一印象です。最初はついて行くのに必死で、苦し紛れに無理矢理アイデアを出すことも多々ありました。ただ、自分の発言が意思決定に繋がっているので、どんな結論になっても最終的には納得できることになるんですよね。だから、当事者意識が芽生えます。
赤星さん:最初はあまりにも即興すぎて困りましたが、案外なんとかなるものだなとも思いました。周りの社員さんが、話す内容にオチをつけているのを見て、最近では自分もオチをつけようと頑張っています(笑)
大根さん:初めのころは、時間切れで話をストップさせられたりと、いろいろな苦労がありました。慣れた今では、会議といえばこのやり方が当たり前と感じていますが、たまに社外の会議に参加すると、「この長い話し合いで何が決まったんだろう…」となることがあって、改めて当社の会議はすごいんだなと実感することはあります。
―高橋さんが、経営会議のリーダーとして、数十名が参加する会議をテキパキと進行する姿には圧倒されました。どのような経緯でリーダーに就任されたのですか?
高橋さん:入社して数年の若手時代に、「副リーダーをやってみないか」と橋本さん(社長)からチャットで直接打診がありました。はじめは戸惑いましたが、経験の浅い私にその役を任せようとする橋本さんの腹の括り方を、私は「(この腹のくくり方、)好きだな。これはチャンスだな」と思い引き受け、その後、副リーダーからリーダーになりました。
―橋本社長はまさにポジティブを体現したような方ですね。
大根さん:橋本さんは、365日24時間会社のことを本当によく考えている方です。感情を切り離して、一緒に課題に向き合ってくれる存在です。橋本さんの姿勢そのものである「みんなの意見を聞く」風潮は、日々差別のない、対等な関係性を大切にする職場をつくっていると思います。
―吉村の魅力って何ですか?
赤星さん:社員同士の関係性がとてもフランクなことです。まだ社歴の浅い自分が行動したことに対して、周りが気づいて評価してくれる環境なので、自分からチャレンジしやすく、仕事を単純作業と感じない、自分らしくいられる職場だと思います。
大根さん:これまで務めていた別の会社では、縛りが多く創意工夫が出来ずに「つまらない」と感じたり、商品の善し悪しを差し置いて“売ること”に必死になってしまい「社会の役に立っていないのではないか」と感じてしまう場面がありました。一方で、吉村で働いていると「楽しくて、人の役に立っている」ことを実感できるんです。だから、「楽しい」「役に立つ」を両立できる吉村は、いい会社だと自分は思っています。
弓場さん:「お助けありがとう」制度は良いですね。部署関係なく、「誰のおかげで~できた」という社員の声を集めた紙を回覧する制度で、ちょっとした当たり前のように思えることでも、お礼の言葉をもらえるのは嬉しいし、仕事のモチベーションアップに繋がっています。
―皆さんが、「一つのオレンジを皆で分け合う」なら、どういう方法がいいですか?
大根さん:有限なものをシェアするのはつまらないので、増やす方向で考えたいです。増やし方をみんなで考えることに意味がある。新しいことを考えることに協力的なのが吉村の良いところなので。
高橋さん:オレンジを植えて増やします。増やしたオレンジをどうするかはその人次第ですが、何かポジティブなことに使おうという方向性だけは、みんな同じ方向を向いていることが大事だと思います。
弓場さん:オレンジを材料にお菓子を作って売ります。売ったお金で次できることの選択肢を広げる。いまあるものを、次にどうつなげられるか、そのアイデア出しに価値を置きたいです。そのアイデアを社員みんなが出せるところが吉村の良いところにだと思います。
赤星さん:すべての方法が正解であると感じます。人によってやり方が違うことがあるが、その中から自分に合ったやり方を選べば良いな、と考えるようになりました。2つ意見がでたときに、片方しか正解がないわけではない。複数の意見の中から自分がより良いと感じるものを選べるのが吉村です。
素敵な会社だということが本当によく伝わってきました!ありがとうございました。
改めて社長にお話を伺ってみます。
―皆が明るく楽しく対等に働ける会社というのは本当でした!でも正直、社長お一人で物事を決めたくなることはありませんか?
橋本社長:私は会社の社長ですが、自分の答えだけが正しいと思ってはいけないと考えています。社長としての強いこだわりが通らないこともありますが、結果的には、皆で決めて良かった!と思えることは数え切れないほどあります。
社員それぞれが持つ発想の豊かさや、未来に起きることに対する予測の精度に、役職や経験の有無はあまり関係ありません。だから、社員は全員、侮れないし尊敬するべき存在です。一人では無く、皆で決めること、これはスピードや効率より大事なことだと思います。
―あらためて、橋本社長にとって、「1つのオレンジを皆で分け合う」とは?
橋本社長:この問いに初めて向きあった時、私は、等分に切り分けたり、ジュースにすることくらいしか思いつきませんでした。でも、植えて新しく増やすという別のアイデアに出会い、私の経営観ががらりと変わりました。今は、限られたものを取り合うのではなく、皆で知恵を出し合って、新たなものを生み出していくことがその答えであり、また「経営」そのものであると考えています。
―皆様の言葉の節々から、本当に、明るく楽しく対等に働ける素晴らしい会社だとわかりました。本日はありがとうございました!
【参考情報】
2024年7月20日(土)に開催された「中小企業DAY2024」の「関東経済産業局の取組紹介~”推し”と語る!『中小企業の魅力』~」に橋本社長、高橋さんをお招きし、より詳しいお話を伺いました。以下リンクより、アーカイブが視聴可能ですので、ぜひご覧ください! (同社の登場は40分20秒頃からです。)